タイ東北部ウドンターニー県バーンドゥン郡で4月26日、行方不明後にため池で遺体として発見された7歳のナッティウくん事件で、検視結果が同日発表され「溺死の可能性」と結論付けられた。並行して警察は母親のカムマイさんを再聴取したが、母親は「息子は溺死で間違いなく、殺人ではない。継父も疑っていない」と強く主張した。先に書いた救援隊員の夢の証言と継父の反論を受けて、捜査の方向性が事故死で固まりつつある状況だ。
検視はウドンターニー病院の法医学チームが担当した。結論は「溺死の可能性」で、合わせて10項目の付加事項が記録された。主なものは:
- 右目周辺と左目周辺の不規則な裂傷
- 右耳、首右側、唇、顔面に青あざ
- 右手と左手のしわ・変色(水中に長時間浸漬したことを示す)
裂傷や青あざは事件性を疑わせる外傷だが、ため池に転落・水底で物に当たったケースでも生じうる範囲とされる。手足の「しわ・変色」は典型的な水中浸漬時の所見で、検視はこれら全体を踏まえて「溺死の可能性」と判断した。
警察側からはバーンドゥン警察署のナッタポン・ソンソム警察中佐(捜査担当副署長)が、母親のナーン・カムマイさんを再度聴取した。母親は終始「息子は溺死で確実、殺人ではない」と主張した。
継父プラムアンさん44歳について疑いを抱いていないかという問いには、母親は明確に否定した。「結婚して1年も経っていないが、夫は私の言うことに何でも従い、給料は全額私に預けてくれる。実の父親より息子のナッティウを愛していた」と語った。先に継父本人がメディアに反論した内容と母親の証言が一致する形で、家族側は事故死の認識で固まっている。
捜査初期に話題となった「救援隊員の夢に少年が現れて『溺れていない』と話した」という証言は、検視結果と母親証言が事故死を裏付ける流れの中で、地元コミュニティの噂レベルに整理されつつある。タイの地方では事件・事故の現場で霊的体験談が語られることは珍しくなく、捜査側もそれを否定することなく聞き取りを進めるが、最終的には法医学的所見と関係者証言で判断する構図だ。
タイ東北部のため池での子供溺死事故は雨季前のこの時期に多発する。村内の灌漑用水路や農業用ため池は柵がなく、子供が誤って近づいても止める者がいない場所が多い。ナッティウくんが自宅から数日離れていた経緯(家出だったのか、誘拐だったのか)は今後の捜査で詰める必要があるが、現場到達後の死因が「溺死」であることは検視で固まった形だ。
警察は引き続き、ナッティウくんが行方不明になってからため池に至るまでの足取りを聞き込み・防犯カメラで追跡する。最終的に殺人ではなく事故死として処理する場合、家族側のグリーフケアが重要な局面に入る。母親の発言からは、再婚家庭としての夫婦関係を守りたい強い意志も感じられる。
タイの地方の家族で起こる悲劇に、外部からの噂や霊話、メディア取材が積み重なる構図は今回も繰り返された。在タイの日本人にとっては直接の関係はないが、農村部の子育て環境と水場の危険性、メディアと家族の距離感を考えるきっかけになる事件だ。