タイ司法省特別捜査局(DSI)は4月26日、東北部サコンナコン県で覚醒剤メタンフェタミン(ヤーバー)283万2000錠を押収し、運搬役の男1人を逮捕したと発表した。3月に押収された別の440万錠案件の関連捜査として展開された摘発で、合計すると2か月で720万錠を超える流通網に切り込んだことになる。
会見はサコンナコン県ムアン郡のタイ国境警察第23管区で開かれた。司法省のルッタポン・ナワラット司法相、DSIのユッタナー・プレーダム局長、第4特別事件センターのチャルーンサック・レンタノームサップ所長らが出席し、第2方面国境警察隊のウッティポン・イェンチット准将と、ラニダー・ルアントーンスクン・サコンナコン県知事が共同で進行を取り仕切った。
経過は次の通りだ。3月に押収された440万錠の流通元を調べる過程で、サコンナコン県内を走る黒のフォード製ピックアップトラックが標的車両として浮上した。捜査員が4月23日から尾行を続け、ワンナーニワース郡ドゥアシーカンチャイ村でトラックを停止させた。荷台を検査すると12袋、計283万2000錠のヤーバーが押し込まれていた。
逮捕されたのはテーワン(姓非公開)。車両と携帯電話を押収のうえ、第1類麻薬(メタンフェタミン)の販売目的所持で起訴され、ワンナーニワース署で本格的な取り調べに入っている。男は運搬役で、組織の上層部が誰かは現時点で伏せられている。
サコンナコンはミャンマー北部・ラオスから流入する麻薬の中継地として近年押収量が急増している地域だ。南北両方向への運搬経路の交差点にあたり、ピックアップトラックを使った大量輸送が定石になっている。今回の12袋・283万錠という規模は、1袋あたり23万6000錠という計算で、地下倉庫から仲卸・末端へ流れる前段階のロットと見られる。
タイ政府は2025年末から麻薬取締を「最優先課題」に格上げしており、DSI・国境警察・第2方面国境警察隊・県警察を統合した合同作戦が常態化している。司法相直々の会見が東北部の押収現場で開かれるのは、政治的メッセージの色合いが強い。ルッタポン司法相は「安全保障機関とのデータ統合をさらに進め、組織の上層部まで切り込む」と続報を予告した。
ヤーバーは1錠あたり末端価格で30〜50バーツが相場で、283万錠を末端流通額で換算すると8500万〜1億4000万バーツ規模になる。タイ国内の年間ヤーバー押収量は2024年に5億錠を突破しており、今回の押収量は単発として大きいが、全体の流通量に対しては氷山の一角に過ぎない。司法相が「拡大捜査を続ける」と強調した背景には、組織を切らない限り押収量の数字だけが膨らみ続けるという現実認識がある。