タイのSNSインフルエンサー「バード・ワン・ワーンワーン(เบิร์ด วันว่างว่าง)」が、4月26日のプラプラデーン水祭りで本来の白粉(ดินสอพอง)の代わりにセメント目地材(ヤーネーン)を水で溶いて参加者の顔に塗りつけた動画が拡散し、ネット上で激しい批判を浴びた。タイの医療系FacebookページとされるDrama-addictが「目地材は強アルカリ性で皮膚剥離・失明リスクがある」と警告を発し、SNSで一気に炎上が広がった構図だ。
タイのソンクラン(水祭り)では、白粉として「ดินสอพอง(ディンソーポーン)」と呼ばれる炭酸カルシウム主体の天然チョーク粉が伝統的に使われてきた。水で溶いて顔や腕に塗り合うのが祝福の意味を持つ習慣だ。一方、今回バード氏が使ったヤーネーン(ยาแนว)はバスルーム・キッチンのタイル目地に詰めるセメント系充填材で、ホームセンターで販売されている建材だ。
問題の動画でバード氏は「クロコダイル印(ตราจระเข้)」のセメント目地材を1袋取り出し、プラスチックバケツに入れて水を注いで混ぜた。本人は手にビニール袋をつけて混ぜていたが、その内容物を知らない参加者の顔には何の保護もなく塗り付けられた。バード氏は動画のキャプションで「プラプラデーン水祭ってこういう遊び方なのか?」と挑発的なコメントを添えて投稿した。
医療系情報を発信するページ「Drama-addict」は、即座に目地材の危険性について解説した。同ページによると、クロコダイル印のセメント目地材を含む一般的なセメント系目地材の主成分はポルトランドセメント、シリカ砂、各種化学添加剤で、水分や湿気と反応すると強アルカリ性(pH12〜13相当)を示す。皮膚に塗布された場合の影響は深刻で、軽度では皮膚刺激と発赤、長時間付着すれば化学やけどによる皮膚剥離が起こり得る。目に入った場合は角膜損傷から視力障害、最悪のケースでは失明に至る。
バード氏のSNSアカウント(インスタグラム @bird_121、フォロワー約21万人)はもともと過激なネタ・悪戯系コンテンツで知られ、2024年12月にも別のインフルエンサー「バンク・レスター」氏と問題動画を作成して炎上、バード氏は短期間ではあるが拘留される事態にもなっていた。それ以降も同種のコンテンツを継続しており、今回のセメント目地材悪戯はバズ目当ての過激化が止まっていない様子を改めて見せた形だ。
タイ国民の反応は厳しい。SNS上には「皮膚が痛くなった」「目に入った」と訴える参加者からの投稿が次々と上がり、警察への被害届相談も複数報告されている。法的には傷害罪(タイ刑法第295条)のほか、危険物質の使用による公衆危害罪が適用される可能性がある。バード氏は意図せずやったとは弁解しにくく、被害者から訴えられれば民事の損害賠償も発生する。
在タイの日本人にとってもプラプラデーン水祭りは観光対象として知られているが、今回の事件は「楽しいはずの祭典で見知らぬ人に塗りつけられる白粉の中身は確認しようがない」という新しい不安を生んでいる。SNS上では「水祭りに行くなら濡れタオルを携帯し、目に入りそうなものを塗られたら即座に水で洗い流す」「白い粉を塗ろうとする見知らぬ人物には警戒する」といった安全アドバイスが共有されている。
警察の対応はまだ正式発表されていないが、被害届が複数集まれば刑事捜査が本格化する見込み。タイの過激インフルエンサー文化への規制強化を求める声も出ており、コンテンツプラットフォーム各社の対応にも注目が集まっている。