タイのスラサック・パンチャルンウォラクン観光スポーツ大臣が4月23日、日本を含む124カ国を対象とした60日間の免税入国制度を全廃する方針を明確に示した。前日(4/22)報じた「対象絞り込みと期間短縮を検討」の段階から踏み込み、大臣が「まず60日免税を全カ国で廃止し、出発前に自国で査証を取得する方式へ切り替える」と正式に表明した格好だ。実施時期は未定だが、外務省と安全保障機関の審査、閣議承認を経て段階的に移行する見通しとなる。
前回報じた通り、現行制度では124カ国のうち63カ国が60日免税、31カ国が15日免税、残りがビザ・オン・アライバル等の枠で運用されている。今回の新情報は、大臣が「60日免税全廃は初動の一手にすぎず、15日免税やその他の優遇措置も順次見直す」と踏み込んだ点にある。日本旅券の保有者は現在、観光目的でタイに入国する際パスポートと出入国カードのみで60日滞在が可能だが、今後はその簡便さが失われる可能性が高い。
スラサック氏が今回さらに強調したのは、免税入国枠の悪用の広がりである。ボーダーランと呼ばれる国境越えによる再入国の繰り返しで事実上の長期居住をする外国人が増え、加えて先日タイ全土で話題になったLTRビザの世界所得0%税制を誇示する事例などが、政府の警戒感を一段と強めた。観光目的を装った違法労働や暗号資産関連ビジネスの脱税拠点化も指摘されている。
代替策として観光相が挙げたのは電子ビザ(e-visa)の本格拡張である。現在のタイe-visaは事業・就労・長期滞在目的の発給が主だが、方針転換後は観光客向けにも全面的に適用する方向が有力視されている。料金、審査日数、申請インターフェースはまだ公開されていないが、他国の類似制度では25〜40米ドル程度の手数料と数日〜1週間の審査時間が一般的だ。
タイ観光業界の反応は分かれている。国際ホテルチェーン団体は「ビザ要件の強化は東南アジア他国へ客足が流れる」と警戒を表明したが、不動産業界とサービス業の一部は「長期滞在者のほうが消費額が大きい」として支持に回っている。ベトナムやインドネシアもタイ類似の免税制度を見直している時期にあたり、地域全体で「質量の転換」が同時進行する可能性がある。
日本人旅行者にとって、短期旅行でも事前のe-visa申請が必須になると、航空券を取ってから出発までに手続きが1つ増える。家族旅行や急な出張、在タイ駐在員の家族が短期訪問する場合にも準備工数が増える。一方で既に非移民ビザや就労ビザを保有する駐在員本人は別カテゴリのため直接の影響は少ない。具体的な実施日と詳細は今後数ヶ月内に閣議決定される見通しで、タイ外務省と在日タイ大使館からの公式発表を注視したい。