タイ観光スポーツ省のスラーサック・パンチャルーンウォラクル相が、現行の60日フリービザ制度を全面的に見直す方針を明らかにした。90カ国以上を対象とする免除政策のうち、どの国を残すかを洗い直し、滞在期間の短縮や観光料の新設で「量より質の観光」へ舵を切る構えだ。
タイは2024年7月、それまで30日だったノービザ入国の滞在可能期間を60日に引き上げ、日本、韓国、台湾、シンガポール、欧州主要国、米国、カナダ、豪州など計93カ国の観光客に適用してきた。コロナ後の観光回復を狙った措置だったが、スラーサック相は「長期滞在が増えた一方で、不法就労や地元労働者との競合、詐欺的な活動の温床になっている例がある」と問題を指摘する。
観光省の分析では、タイを訪れる外国人観光客の約90%が1〜30日の滞在にとどまる一方、10%ほどは30日を超えて滞在している。ここに「観光という名目で働く」ケースが含まれているとの認識だ。政府はこの10%をターゲットに、免除期間の短縮や、リピーターで長期滞在する層への条件付き運用を検討している。
見直しの対象にはすべての現行免除対象国が含まれる見通しで、日本も例外ではない。どの国の観光客がどれだけの収入を落とし、どれだけのトラブルを起こしているかというデータをもとに、免除継続・期間短縮・撤廃の3段階で仕分ける作業が始まっている。
これと並行して、タイ政府は観光料の導入計画も進める。徴収した料金は観光基金に充て、訪問者向けの生命保険・事故保険、観光地の安全対策、公共施設の整備に回すとの説明だ。以前から議論されていた観光客向け入国料は、数年にわたり導入が延期されてきたが、今回の制度見直しとセットで再び前に出てきた形だ。
日本から家族旅行や長期休暇でタイに来る一般の観光客にとって、60日間のノービザ滞在は魅力的な条件だった。タイ駐在員の日本人配偶者や子どもが一時帰国を挟みながら滞在を延長するケースもこの制度を利用してきた。期間が短くなれば、在住ビザへの切替や観光ビザの事前取得を考え直す必要が出てくる。
旅行直前にルール変更の情報をつかめずに空港で足止めされる事態は避けたい。現時点では「見直しの方向性」を示した段階で、具体的な国名・期間・施行日は発表されていない。タイ政府観光庁(TAT)および日本のタイ大使館のアナウンスが続けて出ることが予想されるため、タイ旅行を計画する側は最新情報を確認しながら準備を進めるのが賢明である。