タイ東北部ナコンラチャシマ県(コラート)の県庁(アボーチョー)裏の堀沿いで、黄色い僧衣をまとった集団が菩提樹の下に座り込み、酒を回し飲みしながら接着剤(グルー)を吸引していた動画がSNSで広まり、タイ仏教界を大きく揺らしている。県仏教事務所と警察が22日、現場に乗り込んで一斉捜索を行った。
出動したのはプロンパナー・サエンカルン博士(ナコンラチャシマ県仏教事務所長)、シリチャイ・シーチャイパンヤ大佐(ムアン・ナコンラチャシマ警察署長)、プラプラセート・アチーワロー師(僧侶規律官、ムアン郡第1タンボン代表)と、関係機関の職員らだ。しかし現場に到着した時点で、くだんの集団は通報の気配を察して既に逃走していた。
代わりに残されていた証拠は衝撃的だった。使用済みの接着剤(グルー)袋2つ、接着剤の缶、白酒の空瓶、ござと枕、そして鍋・皿などの調理器具がひとかたまりにまとめて置かれていた。どう見ても一夜限りの滞在ではなく、常習的に寝泊まりしていた生活の痕跡である。
堀沿いの現場は、外の通りからは視線が抜けにくい死角になっており、岩陰や地下トンネルのように落ち込んだ隙間まで伸びる地形で、外部から覗き込んでも簡単には見つからない構造だった。仏教事務所は「長期間にわたり見過ごされていた可能性がある」と認めて強い不快感を表明している。
ポンパナー所長は「本物の僧侶と確認できれば、僧侶規律に基づいて厳正に処分し、強制的に還俗させる。もし偽僧侶が僧衣を着て住民を欺いていた場合は、直ちに警察に引き渡して法律で処罰する」と明言した。地域住民のタイ仏教信仰が揺らがないよう、このケースは徹底的にけりをつける方針だという。
タイでは偽僧侶による托鉢詐欺や、本物僧侶の戒律違反事件がたびたび発覚してきた。2024年にも有名寺院の元住職による巨額着服事件が全国を騒がせ、現在も裁判が続いている。動画で映ったような「僧衣姿で薬物を吸う」現場は、タイの人々の心の中の聖域を直接汚す行為と受け止められやすく、今回もSNSでは「寺に来た寄付金が何に使われたのか」との怒りの声が広がった。
タイ在住の日本人にとっても、早朝の托鉢で僧侶に食べ物を差し出すのは東南アジア仏教圏の文化的体験の一つである。目の前の僧侶が本物かどうかを見抜くのは簡単ではないが、大きな寺や地元に根付いた寺を選んで布施することは、こうした「僧衣ギャング」に吸い取られないための一つの目安となる。