タイ下院議員にとって長らく「職場の特権」だった無料食事サービスが、4月22日の本会議を境に終わりを迎えた。議会事務局は会議場すぐ脇の食堂にフードコート形式の販売所を設け、議員は他の社会人と同じように自腹で昼ごはんを買うことになった。
ソポン・サラム下院議長が各政党党首と協議したうえ、全会一致で方針が固まった。ソンクラン休会明けの初日である22日から施行された。これまでの無料ビュッフェ方式を廃止し、事務局が運営するクーポン販売所に切り替えた形だ。
販売業者は同事務局側の既存フードコートを手がけているギンニー・フード・アンド・マーケット社が担当する。議員は自費でクーポンカードを購入するか、スマホ決済のPromptPayで精算する。金額はメニューごとに明示され、市井のフードコートと同じ仕組みだ。
当日、販売所にはタイを代表する料理が並んだ。北部のカオソーイ、定番のカオマンガイ、カオムーデーン(赤肉のせご飯)、カオムーガーロープ(カリカリ豚のせご飯)、ラーメン系のクイティアオ、鶏のさきかけヌードル、南部イスラム系のカオモクガイ、スイーツのカノムブアンまで、一般のタイ人が通う食堂とほぼ同じメニュー構成が組まれた。
モー・ワロング元プラチャチップタイ党議員が自主的に各店舗を巡り、味と価格を動画でレビューするなど、SNSは「議員フードコートの初日」の話題で一気に埋まった。「ビュッフェ時代は税金だったが、これからは自分の財布から払う方が健全だ」という反応が広く共有されている。
議員の食費や会食の公費負担は、歴代議会で繰り返し批判の対象になってきた項目の一つである。今回の改革は福祉見直しの第一弾という位置づけで、今後は他の議員特典や会議に伴う経費についても段階的な整理が予告されている。
タイ駐在の日本人にとって、市民のフードコート風景は日常そのものだ。その光景が国会議員の足元にも広がった象徴的な1日は、ニュースとしてはやや地味ながら、タイの政治文化が少しずつ「普通の仕事場」へ近づいていく節目として記憶されそうである。



