タイ東北部レーイ県チエンカーン郡のメコン川で、全身にこぶが並んだ異常な魚が地元漁師の網にかかり、住民に衝撃を与えている。22日にも体長23センチ、重さ100グラムのプラー・ケー(ナマズ類の淡水魚)がドンカイ付近で捕獲された。表皮の至るところに腫瘍のような突起が並び、売り物にも食用にもできない状態だった。
チエンカーン郡のコミュニティ観光・地元漁業グループで幹事を務めるチャーンナロン・ウォンラー氏によると、同様に全身に腫瘍らしきものが広がった個体が確認されたのは、この2ヶ月でこれで3匹目となる。プラー・ケーはメコン川の水面近くを回遊し、小魚を捕食する種で、異常が相次ぐ意味は小さくない。
漁師たちは「売れば食べた人が体調を崩すかもしれない」との恐れから、見つかった魚は市場に出さず、環境科学を扱う大学や関係機関に提出して分析を依頼する方針だ。「メコンの水の変化がこれ以上進めば魚の種類だけでなく、消費者の安全と漁業の収入にも直接響く。生態系が壊れてしまう前に水質の検査を急いでほしい」とチャーンナロン氏は訴える。
背景にあるのは上流域からの流出が疑われる重金属汚染である。2024年以降、チェンライ県を流れるコック川では基準値を超える重金属が検出された経緯がある。水質検査の結果は、ミャンマー領内の金鉱山群の開発活動が排出源と指摘された。コック川は下流のチエンセン郡を経てメコン川に合流しており、汚染物質は国境を超えて広がっていく構造になっている。
レーイ県のチエンカーンはタイ人にもよく知られた川沿いの観光地で、ドイツ風の川べりカフェや市場を訪れる日本人旅行者も少なくない。名物のメコン川魚料理は観光の目玉の一つだが、今回のような腫瘍魚が続く状況は、地域経済と観光イメージの両方に影を落としかねない。
タイ側の公害管理局と水資源省は、上流からの汚染源特定のために中国・ミャンマー・ラオスと連携した越境モニタリングが必要だとの立場を示してきたが、実効的な取り組みは進んでいない。レーイ県の魚に次々と現れる異変は、タイ北部・東北部のメコン流域が国境を越えた環境問題のしわ寄せを受ける最前線であることを改めて突きつけている。