アユタヤ県ナコンルアン郡のワット・サデット(寺院)裏の用水地で4月23日、81歳の女性プラジュアップさんが、排水管に入り込んでしまった飼い犬を助けようと自ら管内に潜り、途中で気絶する事故が発生した。アユタヤ救援協会の救援隊がコンクリート穿孔機で排水管の中央部を切り開き、30分ほどの作業で無事に救出に成功した。本人と犬のどちらにもケガはなかった。
現場はパサック川沿いのクロンサケー区で、寺院の裏手にある使われなくなった排水管だった。鉄筋コンクリート製で直径は50センチ、全長は約5メートル。土に半ば埋まり、一部は地上に露出している状態で、内部には土砂が詰まって通路はさらに狭くなっていた。プラジュアップさんは飼い犬が管の中に入り込んで出てこないため、自分で様子を見に行こうと管に潜ったところ、酸素不足と高温で意識を失ったとみられる。
通報を受けたアユタヤ救援協会の無線センターは、救援隊員と救急車両、そしてソムデット・プラサンガラート病院の医師・看護師を現場に派遣した。到着した隊員は、女性が5メートルの管の中央付近でうつ伏せに倒れていると確認し、管の外から引き出すのは物理的に不可能と判断。代わりに管の中央部分にコンクリート穿孔機で穴を開け、救出口を直接つくる作戦に切り替えた。
穿孔作業と並行して、救援隊は管内の空気の入れ替えに取りかかった。電動ファンを管の端に設置して室温を下げ、酸素を送り込み、呼吸に必要な流れを確保する。約30分後、直径50センチほどの穴を管の中央に開けることに成功。救援隊員が女性を穴からゆっくり引き出した瞬間、反対側の管の出口から元気な犬が自力で走り出てきたという。現場の住民からは歓声と拍手が上がった。
タイの地方では、かつて農地や寺院の排水用に設置されたコンクリート管が、そのまま放置されるケースが多い。内部に土砂がたまり、野良動物や家畜が迷い込むと出られなくなる事例が全国各地で報告されている。だが今回のように、高齢者が救出のために自ら潜るケースは特に危険で、酸素不足、管内の湿気と温度上昇、狭い空間でのパニックが重なれば短時間で意識障害に至る。
日本でも下水管や側溝に犬や猫が入り込む事故は起きるが、高齢の飼い主が自分で救出に向かうケースは稀だ。タイでは犬猫と家族のように暮らす感覚が強く、病人や要介護の配偶者より先にペットの身を案じる高齢者も少なくない。今回のニュースは、タイの動物への愛情の深さと、放置インフラの見えないリスクを同時に示した格好となった。地域によっては古い排水管や井戸の点検整備が追いついておらず、行政の関心が集まる一つの契機になりそうだ。