タイ空軍の戦闘機操縦訓練機T-50TH「ゴールデンイーグル」が4月23日午後、ナコンラーチャシーマー県(通称コラート)の第1飛行隊基地で着陸の際に滑走路を逸脱した。パイロットは自力で機外に脱出し、無傷だったことが確認されている。機体は接地後に滑走路外へ大きく外れたものの損傷は軽微で、空軍は事故原因の調査を急いでいる。
事故はコラート市ノンパイローム区にある第1飛行隊の基地で発生した。着陸時に接地してから、機体が何らかの理由でコントロールを失い、舗装された滑走路から側方の草地に突っ込む形で停止したとみられる。機体はタッキー郡(ナコンサワン県)を拠点とする第4飛行隊の第401飛行中隊に所属しており、この日はコラートへの訓練任務で飛来していた。空軍は再発防止のため原因究明を最優先事項に位置づけている。
T-50TH「ゴールデンイーグル」は、韓国航空宇宙産業(KAI)とロッキード・マーティンが共同開発した超音速訓練機で、初等戦闘機パイロットの養成と軽攻撃任務の両方をこなせる多用途機である。最高速度はマッハ1.5程度、時速にして約1,800kmに達する。タイ空軍は老朽化したL-39ZA/ART練習機の後継として2015年から12機を2期に分けて調達し、第401飛行中隊に集中配備した。
主な任務は新人パイロットの戦闘機操縦訓練と、国境パトロールを含む軽攻撃運用である。これまで大きな事故は発生しておらず、2022年に着陸装置のトラブルが1件報告されている程度だった。今回の滑走路逸脱は、T-50TH導入から10年以上の運用で最大級のアクシデントとなる可能性がある。
滑走路逸脱(runway excursion)は、訓練機や民間機を問わず着陸時に起こりやすい典型的インシデントの一つだ。原因として考えられるのは、ブレーキ故障、横風の影響、パイロットの操作ミス、滑走路の汚損や水溜まりなどが一般的である。タイは4月23日現在、前日に発令された夏嵐警報の影響範囲内にあり、コラートを含む東北部は突風と雷雨が予報されていた。天候要因が関与した可能性も検討対象となる。
タイ空軍のT-50THは、韓国が輸出した戦闘機訓練機の成功例として知られ、日本人読者にとっては航空自衛隊が使用する川崎T-4と並列で語られる機体である。日本メディアで大きく取り上げられる頻度は高くないが、タイを含む東南アジアの空軍近代化の代表的ケースとして航空ファンの注目を集めてきた。今回の事故は機体自体の信頼性そのものを揺るがすものではないが、調査結果と再発防止策の内容次第では、他の運用国(韓国、インドネシア、イラク、フィリピン等)でも手続き見直しの契機になり得る。