タイ中部ナコンサワン市の中心部、ナコンサワン市役所管内のチャムロン・ウィット・パタナー集落にある「リケ小路(ソイ・リケ)」で22日午後4時ごろ、賃貸住宅1軒から出た火が一気に周辺住宅へ広がり、3時間以上にわたる大規模火災になった。22日夜段階で少なくとも10軒以上の家屋が焼失し、被害は拡大しつつある。
チャムロン・ウィット・パタナー集落は220戸を超える木造住宅が密集したダウンタウン・コミュニティで、家屋同士が壁を共有するほど密着している場所が多い。一度出火すると隣家に移るまでの時間はわずかで、乾燥した屋根材と古い木壁が一気に炎を広げた。
消火に駆けつけた消防隊は10台以上のタンク車を動員して、集落を多方向から取り囲むように放水を始めた。しかし表の道路や小路はいずれも狭く、ポンプ車が発火元の中心までたどり着けない。ホースを担いで徒歩で突入し、延焼を食い止める作業が長時間続いた。
火元となった賃貸住宅の近隣住民は「気がついた時には家のすぐそばまで火が回っていて、逃げるのが精一杯だった。家財ひとつ持ち出せなかった」と肩を落とす。「炎の広がりが驚くほど早く、手元のスマホと鍵を握りしめて走ることしかできなかった」と振り返る。
消防は約3時間かけて火の手を集落の一角に食い止め、周辺住宅への延焼を遮断する形で鎮圧した。夜になっても煙は立ち上り続け、焼け跡の安全確認と倒壊リスクの評価が続いている。被害の最終件数と焼損面積は翌日以降に詳細が発表される見通しだ。
ナコンサワンのような地方都市では、川沿いや鉄道沿いに木造の古い家屋が密集する「オールドタウン」エリアが残っている場所が多い。乾期と熱波が重なる4月は、最も火災リスクが高まる季節の一つでもある。電気配線の老朽化やコンロの消し忘れ、蚊取り線香の火が引き金になるケースが繰り返し報告されてきた。
タイ在住の日本人にとっても、こうした中心市街地の古い集落は観光写真の被写体であると同時に、自宅や宿泊先の近くで起こりうる災害の現場でもある。地元で賃貸住宅を借りる際は、延焼を食い止める壁の構造と、路地の広さ・消防車のアクセスという2点を契約前に確認しておくことが、いざという時の家財と命を守る一歩になる。