ナコンシータマラート県パクパナン警察署が22日、ヤラー県ヤハ警察署所属の現職警察官を覚せい剤ヤーバーの密売容疑で逮捕した。現場からはヤーバー錠17錠のほか、本人名義の警察手帳と身分証明書が押収され、同署の監察部門と並行して刑事事件として立件される見通しだ。
逮捕を指揮したのはパクパナン警察署長のプラパット・シーサングチョン大佐で、同署捜査部と合同で捜索・拘束を行った。逮捕された巡査3級のキッティ氏(姓非公表)はヤラー県ヤハ署に配属されながら、ナコンシータマラート側の密売ネットワークに関与していたとみられている。
事件の発端はパクパナン郡内の麻薬ディーラー組織への捜査だった。末端の販売人から上流をたどる過程で、供給ルートの中に警察官の存在が浮かび上がり、内偵の末に今回の身柄確保に至った。押収されたヤーバーは典型的な錠剤タイプで、プラスチック袋に小分けされていた。
警察の内部規則では、今回のような逮捕の場合、所轄は刑事事件の手続きと並行して懲戒処分の検討を始めることになっている。ヤハ警察署長側も「所属の監督責任と懲戒手続きを直ちに進める」との方針を示しており、現職に復帰する可能性はほぼないとみられる。
タイでは2025年以降、深南部3県(ヤラー・パッタニー・ナラティワート)を拠点に活動する麻薬ネットワークが、国境地帯と東南部のナコンシータマラートやスラタニーまで商圏を広げていることが摘発で明らかになってきた。警察官自身が流通網の末端に取り込まれるケースも、ここ数年で複数の県で相次いでいる。
タイ在住の日本人駐在員や旅行者にとって、ヤーバーは繁華街のナイトクラブ周辺やデリバリーSNS経由で流通しており、接点は意外に近い。現職警察官が売り手側に回る事例は、「警察に頼めば大丈夫」という発想が通用しない現実を改めて突きつけるものだ。
捜査班はこの警察官単独の行動ではなく、背後に組織的なサプライチェーンがあるとみて、共犯者の有無や仕入れ先の特定を進めている。ヤハ署の上層部は処分と再発防止策の両面で対応を迫られており、深南部の治安情勢に絡む論点として続報が続く見通しだ。