タイ南部トラン県で、警察が覚醒剤の錠剤22万錠を押収した。錠剤は宅配便の小包の中に隠されており、宛先には、すでに亡くなった人の名前が使われていた。捜査の手が及ばないよう、実在しない受取人を装う巧妙な手口だ。警察の犯罪鎮圧部(CSD)が密売グループを追い、配送を突き止めた。
故人の名前で配送
押収されたのは、タイで「ヤーバー」と呼ばれる覚醒剤の錠剤22万錠。民間の宅配サービスを使って送られた小包の中に隠されていた。捜査当局によると、密売グループは荷物の宛先に、すでに死亡した人物の名前を使っていた。
受取人を実在しない、あるいは追跡されにくい人物にしておけば、万一荷物が見つかっても、誰が受け取るはずだったのかをたどりにくくなる。配送業者を使った薬物の密売で、足がつかないようにするための工作だったとみられる。
宅配便を使う密売
近年、タイでは麻薬の密売に宅配便を利用する手口が目立っている。買い手と直接会わずに、荷物として全国どこへでも送れるため、密売グループにとっては都合がよい。実際、別の事件では、覚醒剤をジーンズの中に縫い込んで全国に発送していたケースも摘発されている。
今回のように、宛先を偽装して荷物に紛れ込ませる手口は、対面での取引よりも発覚しにくいとされる。SNSやチャットアプリで注文を受け、宅配便で送るという「非対面」の密売は、近年急速に広がっている。それだけに、配送網のどこで不審な荷物を見抜けるか、配送業者とどう連携するかが、取り締まりの鍵になる。
安価で広がるヤーバー
ヤーバーは、ミャンマーとの国境地帯などで大量に作られ、1錠あたり数十バーツと安価で出回ることで知られる。安さと入手のしやすさから、若者を含めて広く使われ、タイの深刻な社会問題となっている。当局はこの数か月でも、数億錠規模の覚醒剤を押収しており、流入の勢いはなお衰えていない。
22万錠という量は、こうした密売の一端にすぎない。次々と新しい手口が生まれるなか、取り締まりとのいたちごっこが続いている。