タイ北部メーホンソン県パイ郡で、タイ人名義を使ってスタジオ事業を違法に運営していたとして、39歳のイスラエル人男性が逮捕された。男は、登録書類に虚偽の情報を記したうえで、本来は外国人に認められていない事業を、タイ人を名義上の所有者に立てて営んでいた疑いが持たれている。パイでは近年、外国人による「名義貸し(ノミニー)」を使った違法な事業や土地取得が問題となっており、当局は取り締まりを強めている。
パイで何が起きたのか
逮捕されたのはゴーレン容疑者(39)。パイ郡トゥンヤオ区の住居で身柄を確保された。当局によると、男はタイ人を形式上の株主や所有者に立てる「名義貸し」の手法を使い、スタジオ事業を実質的に外国人が支配する形で運営していたとされる。さらに、公的な登録書類に事実と異なる情報を記載していた疑いもある。
タイでは外国人事業法により、多くの業種で外国人の出資比率が原則49%までに制限されている。タイ資本が過半を持つ建前で、実際には外国人が事業を支配する。名義貸しは、その制限を形式的に回避するための手口として知られ、法律で禁じられている。
広がる「ノミニー」摘発
今回の逮捕は、単独の事件ではない。パイをはじめとする観光地では、外国人がタイ人の名義を借りて、ホテルやレストラン、土地などを実質的に支配する事例が次々と明らかになっている。
当局がこの5月に行った摘発では、外国人の名義貸しに関わるとして32社が浮かび上がり、45区画、40ライ(約6.4ヘクタール)を超える土地が絡み、被害額は2億バーツを超えると見積もられた。タイ人名義を使ってオーナーを隠していた無許可のホテルなども確認されている。一連の取り締まりの中で、違法に事業を営んでいたとして10人を超える外国人が国外退去となったとも報じられている。こうした流れの中で、当局はパイなどでの監視と捜査を強化してきた。
なぜ問題視されるのか
名義貸しが問題なのは、外国人の事業を制限する法律の趣旨を骨抜きにし、税や規制の網をすり抜ける温床になりかねないからだ。地元の人が、よく分からないまま名義を貸し、トラブルに巻き込まれるリスクもある。
パイは、雄大な自然と落ち着いた雰囲気で外国人旅行者に人気の町だが、一部の外国人による無秩序な事業展開が、地域社会との摩擦を生んできた面もある。当局の取り締まりは、特定の国の人々を狙ったものというより、ルールを逸脱した事業をただす狙いがあるとみられる。観光の活気と地域の暮らしのバランスをどう保つかが、改めて問われている。