バンコクで配車アプリ「ボルト」の運転手が日本人男性を殴打した事件で、警察が運転手を立件し、6月4日に出廷させる見通しとなった。運転手は、公共交通に必要な免許を持たずに営業していたことも判明した。さらに、政府が事業者ボルトに説明を求めるなど対応に乗り出しており、配車サービス全体の安全をめぐる問題へと発展している。 (関連記事:バンコクでボルト運転手が日本人客を暴行)
ドライバーを立件、無許可の営業も発覚
事件は5月28日、バンコク中心部のアソーク交差点付近で起きた。スクンビット通りのソイ30で飲食店を営む52歳の日本人男性が、料金をめぐるトラブルの末に運転手から繰り返し殴られ、頭などにけがを負った。
きっかけは、ラチャプラロップ通りからスクンビット・ソイ45へ向かう乗車だった。運転手は「料金が安すぎる」「渋滞がひどい」と不満を述べ、男性は目的地の手前で車を止められたと主張している。男性自身も、運転手を罵り、運転席を蹴ったことは認めているが、運転手はその後に男性を路上で追いかけ、一方的に殴ったとされる。運転手はこれを「積もり積もった不満が爆発した」と説明したという。
運転手は暴行を認めて供述しており、陸上運送法違反などの疑いで立件された。捜査の過程では、運転手が公共交通の営業に必要な免許を持っていなかったことも明らかになった。使われていた車は運転手の父親の名義で、アプリのアカウントは運転手本人のものだったという。運転手は6月4日に出廷する予定だ。
タイでは、自家用車を使った配車サービスが広く普及する一方、適切な営業許可を持たない運転手の存在がたびたび問題視されてきた。今回、暴行事件をきっかけに無免許の営業が明るみに出たことは、配車サービスの管理体制の甘さも浮き彫りにしている。
被害者は示談を拒否、全面的な法的措置を求める
運転手側は、男性に謝罪し示談を持ちかけたとされる。しかし男性はこれを拒み、今も続く精神的な苦痛を理由に、正式な法的手続きを求めている。広い通りで一方的に殴られ、周囲のバイクタクシーの運転手や通行人が止めに入るまで暴行が続いたとされ、その衝撃は小さくない。
政府が乗り出し、配車業界全体の調査へ
この事件は、単なる個人間のもめ事にとどまらず、政府を巻き込む事態となっている。首相府の担当者が6月2日に警察署を訪れたほか、消費者保護委員会はボルトに対し、6月5日までに説明するよう求めた。担当の閣僚は「消費者の権利の重大な侵害だ」と述べ、複数の省庁が連携して対応にあたるとしている。
運転手のアカウントには2,000件を超える過去の乗車記録があり、事件の前にも複数の低評価が付いていたという。当局は6月12日に、ボルトを含むおよそ13の配車事業者を集めて、安全対策の見直しを進める方針だ。バンコクでは多くの在住者や旅行者が日常的に配車アプリを使っており、利用者の安全をどう確保するかが、改めて問われている。