タイの著名な政治家で元首相のタクシン・チナワット氏が、最新の恩赦令の対象に含まれ、保護観察から即時に解かれる見通しとなった。複数のタイ大手メディアが6月2日に報じた。これまで9月上旬まで続くとされた監督期間を待たずに、完全に自由の身になるという。タイ政治を長年揺るがしてきた人物の処遇だけに、波紋を呼びそうだ。
恩赦令でタクシン氏が対象に
報道によると、今回の恩赦は、王妃の誕生日にあたる祝典に合わせて出された2026年の恩赦令(王室恩赦の勅令)によるものである。勅令は官報にあたるラチャキッチャーヌベークサーに掲載され、多くの受刑者の減刑や釈放の基準を定めている。タクシン氏は、残りの刑期が1年以内の対象者を定めた規定に該当するとされ、保護観察などの監督下からただちに外れることになるという。
当初、タクシン氏は2026年9月上旬まで保護観察下に置かれる予定だった。今回の恩赦令によって、その満了を待たずに監督が終わる形となる。ただし、恩赦の具体的な手続きや確定の状況については報道をもとにした情報であり、詳細は今後の公式な発表で固まるとみられる。
帰国・実刑から仮釈放まで
タクシン氏は、約15年に及ぶ海外滞在を経て2023年にタイへ帰国し、汚職などの罪で実刑判決を受けた。当初は複数の事件で合計8年の刑とされたが、王室への恩赦の請願が認められ、刑期は1年にまで短縮された。収監中はほとんどの期間を警察総合病院で過ごし、健康上の理由が取り沙汰されるなど、その処遇には当初から疑問の声も上がっていた。
2026年に入って仮釈放され、数か月の保護観察と電子監視装置の装着という条件のもとで生活してきた。今回、その監督期間も終わりを迎えることになれば、タクシン氏は法的な拘束から完全に解放されることになる。
帰国後も続くタクシン氏をめぐる論争
タクシン氏は2001年に首相に就任し、農村部を中心に絶大な支持を集めた一方、2006年の軍事クーデターで失脚した。妹のインラック氏も首相を務めたが、2014年のクーデターで政権を追われている。タイの政治は長年、タクシン派と反タクシン派の激しい対立を軸に動いてきた。
タクシン氏の一族は、その後もタイ政治の中心にあり続けた。娘のペートンタン氏が首相を務めた時期もある。一方で、タクシン氏の処遇をめぐっては、特別扱いではないかとの批判が根強く残っている。
今回の恩赦による早期の解放も、支持者にとっては当然の措置である一方、反対派からは法の下の平等を問う声が上がる可能性がある。タイ社会において、タクシン氏の名はいまだに賛否を鋭く分ける存在であり、その動向は今後の政局にも影響を与えるとみられる。