タイ全土のエビ養殖農家が6月4日、首都バンコクに集まり、農業協同組合相に対して価格暴落の打開を求める陳情を行う。養殖農家の代表が明らかにした。マレーシアによる輸入停止に加え、慢性的な低価格と過剰供給が重なり、農家の経営は厳しさを増している。一次産業を支える養殖農家の窮状が、改めて表面化した形だ。 (関連記事:マレーシアのタイ産エビ禁輸、首相が緊急交渉を指示)
6月4日に農相へ陳情、エビ農家が結集
報道によると、トラン県のエビ養殖農家の代表で、養殖関連の組合で要職を務めた人物が中心となり、全国の農家に呼びかけて6月4日の集結を計画している。農家側は、価格暴落への対策とあわせて、エビ養殖の仕組みそのものを抜本的に立て直すよう求める方針だという。
南部を中心とするエビ産地では、これまでも価格の下落に抗議して幹線道路の封鎖も辞さない構えを見せるなど、農家の不満は限界に近づいていた。今回の陳情は、その不満が再び行動に表れたものといえる。
なぜエビ価格は暴落したのか
価格下落の背景には、複数の要因が絡み合っている。一つは供給過剰である。隣国マレーシアが6月1日からタイ産エビ5品種の輸入を停止したことで、行き場を失ったエビが国内市場にあふれ、とりわけ南部で出荷価格を押し下げる懸念が強まっている。
これに加えて、世界市場での競争も激しい。世界最大のエビ生産国であるエクアドルは年間130万トン以上を生産し、インドも米国市場で大きなシェアを握ってきた。安価な輸入エビとの競争のなかで、タイ産エビは価格面で押され続けてきた。
タイ政府はこれまでも、農家を支えるための買い上げ策を打ち出してきた。一定量のエビを政府が買い取って一時的に保管し、価格の下支えを図る仕組みもその一つである。それでも、構造的な問題が解決しないかぎり、価格の不安定さは繰り返される。
病気と競争に揺れるタイのエビ産業
タイのエビ産業は、長年にわたって苦境が続いてきた。慢性的な病気の発生、海外勢との価格競争、気候災害などが重なり、過去13年間で失われた収入は6,500億バーツ(約3兆2,000億円)に上るとの試算もある。かつて世界の上位を占めたタイの生産量は、現在は年間およそ27万トンにとどまっている。
一方で、活路がないわけではない。米国がインド産エビに高い関税を課す動きを見せており、タイにとっては輸出を伸ばす好機になるとの見方もある。業界には、生産量を40万トンへ引き上げる目標を掲げ、これを国家的な課題として取り組むよう政府に求める声もある。養殖農家の暮らしを守りながら、産業全体をどう立て直すかが問われている。