タイ・チョンブリ県シーラチャ郡スラサク区ムー4の丘陵地帯で2026年5月26日午後4時頃、超高級木材「マイ・パユーン(ローズウッド、ไม้พะยูง / Pterocarpus macrocarpus)」の違法伐採現場が摘発された。地元行政・森林局・警察の合同チームが、シーラチャ港背後の丘陵で大木2本が伐採された現場に踏み込み、「フォン氏」と「チャイポール氏」の容疑者2名を逮捕した。両者の尿検査で薬物陽性反応が出ており、薬物使用下での違法伐採という二重の犯罪が成立する見込み。伐採は前夜の午前0時頃に行われ、幹の直径は2人で抱ききれないほどの大木で、現場ではチェーンソー1台・チェーンソーチェーン・フック・2輪牽引カートも押収された。シーラチャは日系企業が多数進出する東部経済の中心地だが、その背後の山岳地帯では今でもローズウッドの密伐採が続いている実態が浮き彫りになる。
5/26、シーラチャ港裏の丘陵地帯で摘発
事件の発端は、ムー4スラサク区の村長イッティパット・プンサワット氏(Mr. Itthiphat Phunsawat)が、不審な伐採活動の情報を受けて関係機関に通報したこと。5月26日午後4時頃、地元警察・森林局・チョンブリ森林保護ユニット1・地方行政・村落防衛隊が合同で現場に向かい、伐採現場を急襲した。
現場では、ローズウッドの大木2本が前夜午前0時頃に伐採されており、幹の直径は2人で抱ききれないほどの太さがあった。容疑者「フォン氏」と「チャイポール氏」の2名が現行犯で逮捕され、伐採用具一式が押収された。
押収品、チェーンソーから2輪牽引カートまで
現場で押収された伐採関連の用具・物品は以下の通り。伐採されたローズウッドの大木2本(全長・直径とも大型)、丸太、チェーンソー1台、チェーンソーチェーン、フック(木材を引きずるための鉤型工具)、2輪牽引カート(伐採木の運搬用)。
これらの押収物から、容疑者2名が比較的小規模な組織または個人レベルでの違法伐採を行っていたことが推測される。大規模組織であれば、トラックや大型運搬車両が使われるはずだが、2輪牽引カートというのは、住宅地・道路沿いの丘陵地帯での小規模オペレーションを示す痕跡。
容疑者2人、薬物尿検査で陽性
逮捕された「フォン氏」と「チャイポール氏」の両者は、現場で実施された尿検査で薬物陽性反応を示した。具体的な薬物の種類は警察によって特定中だが、タイで多用される覚醒剤(ヤバー、ヤイス)、大麻(THCレベル超過の可能性)、ケタミンなどが対象として検討される。
薬物使用下での違法伐採は、二重の犯罪を構成する。タイの森林法に基づく違法伐採罪と、薬物関連法に基づく薬物使用罪・所持罪の両方が適用される。罰則は加重される。
マイ・パユーン(ローズウッド)、タイ国家保護対象の超高級木材
「マイ・パユーン(ไม้พะยูง)」は学名Pterocarpus macrocarpusで、タイ原産の高級木材。中国・東アジア・中東向けの装飾品・家具・工芸品の素材として、世界的に高値で取引されている。
国際取引はワシントン条約(CITES)で規制されており、タイ国内でも違法伐採は森林法に基づき厳しく禁止されている。それでも闇市場価格は1m³あたり数十万〜数百万バーツに達し、密伐採の経済的インセンティブが強く残る。
チョンブリ県シーラチャ郡、日系企業集中地帯
事件が起きたシーラチャ郡は、タイ東部チョンブリ県の主要郡。バンコクから約130km南東、レムチャバン港に近い東部経済回廊(EEC)の中心地で、日系企業が多数進出している。トヨタ、ホンダ、日産、いすゞ、ヤマハ、川崎重工、味の素、その他数百社の日系製造業がシーラチャ・レムチャバン・アマタナコン工業団地に集積している。
しかし、シーラチャ港の背後には今でも丘陵地帯・森林が残っており、こうした地域でローズウッドの違法伐採が続いている実態。日系企業の駐在員や家族が住む都市部からわずか数km離れた山岳地帯で、密伐採が日常的に行われている構図となる。
タイのローズウッド密伐採、中国市場への密輸ルート
タイのローズウッド違法伐採は、最終目的地が中国市場である場合がほとんど。中国の富裕層・コレクター・高級家具メーカーがローズウッド製品に高い需要を持ち、闇市場価格が1m³あたり数十万元(数百万バーツ相当)に達する。
密伐採→国内仮置き→ベトナム・ラオス国境経由→中国へという密輸ルートが主流。タイ政府・国際機関・中国当局は連携して取り締まりを強化しているが、需要が高水準を維持する限り、密伐採は根絶できない構造的問題となっている。
摘発の意義、村長通報の重要性
今回の摘発で重要な役割を果たしたのが、ムー4スラサク区の村長イッティパット・プンサワット氏。地元コミュニティの目が、こうした違法行為の早期発見に不可欠であることを示す事例となる。
タイの森林局は、村長・地方議員・住民との連携を強化することで、密伐採の取り締まり効率を高めている。今回のシーラチャ事案は、その連携の成果の一つと位置付けられる。
違法伐採の罰則、タイ森林法の規定
タイの森林法における違法伐採の罰則は、伐採対象の種類・量・場所により異なるが、ローズウッド等の保護種の違法伐採の場合、最高で20年の懲役と数百万バーツの罰金が課される。さらに薬物使用罪・所持罪が加わると、刑期はさらに長くなる。
容疑者2名は、今後の捜査で密伐採ネットワークとの関連、購入先、運搬ルートなどが解明される予定。協力次第では、刑罰の軽減も期待できる。
ローズウッド密伐採の現場、東部地域での頻発
タイ東部・中部・北部の森林地帯では、過去5年で数多くのローズウッド密伐採事件が摘発されている。チャンタブリ、トラート、サケーオ、プラチンブリ、ナコンナヨーク、サラブリ等の県で大型摘発が相次いでいる。
タイ政府は、衛星画像分析、ドローン監視、現地森林局員の配置強化、村民通報システムの整備など、複合的なアプローチで取り締まりを強化している。それでも、ローズウッドの闇市場価値が高すぎるため、新たな密伐採グループが次々と発生する状況。
摘発の社会的影響、環境保護への意識向上
シーラチャ港裏での違法伐採摘発は、タイの環境保護意識を改めて喚起する事例となる。SNSでは「絶滅危惧種を守ろう」「中国の需要を抑制せよ」「タイの森林を子孫に残せ」など、環境保護を訴える声が多数寄せられている。
タイ社会では近年、若年層を中心に環境意識が高まっており、こうした密伐採事件への関心が継続的に強い。シーラチャの事例は、都市部のすぐ近くで起きた事案として、日系企業駐在員を含む在住者・観光客にも問題の身近さを示すものとなる。


