タイ・チョンブリ県のカオキアウ・オープン動物園(สวนสัตว์เปิดเขาเขียว / Khao Kheow Open Zoo)は2026年5月、タイの自然界で40年以上前に絶滅した大型コウノトリ「ルクノックタクラム(ลูกนกตะกราม / Marabou Stork / Greater Adjutant、和名:オオハシコウ)」の雛の人工孵化に成功した。スチャート・チョムクリン環境天然資源省大臣(นายสุชาติ ชมกลิ่น)が発表したもので、タイ国内では初めての繁殖成功事例。世界全体でも、バンプラ水鳥繁殖センター(タイ)、アッサム動物園(インド)、アンコール生物多様性保全センター(カンボジア)に続く4番目の人工繁殖成功施設となる。カオキアウ動物園所長のナロンウィット・チョットチョーイ氏(นายณรงวิทย์ ชดช้อย)は「タイ国内に残る唯一の繁殖ペアから採取した卵を、インキュベーターと手育てで命をつないだ」と説明、動物保全関係者と医療チームの「セーブ・ライフ作戦」の結果として発表した。タイの生物多様性保全における重要な節目として、国際的な動物保護コミュニティから注目を集めている。
ルクノックタクラム、タイで40年以上前に絶滅
ルクノックタクラム(Greater Adjutant / Leptoptilos dubius)は、大型コウノトリ科の絶滅危惧種の一種で、成鳥の体長は120-150cm、翼幅は2.5m前後に達する。インド、カンボジア、ベトナム、東南アジア、ミャンマー、タイの湿地帯・農地に生息していたが、生息地の縮小・狩猟・農薬汚染・人為的攪乱で個体数が急減した。
タイ国内では、最後の野生個体が確認されてから40年以上が経過し、自然界から事実上絶滅した状態にある。IUCN(国際自然保護連合)レッドリストでは「絶滅危惧IB類(EN)」に分類され、世界の野生個体数は約800-1,200羽と推定されている。
カオキアウ動物園、唯一のペアから卵採取+人工孵化
カオキアウ動物園所長ナロンウィット氏の説明によると、本繁殖の経緯は以下の通り。
- カオキアウ動物園が保有する繁殖ペア(オス1羽+メス1羽)から卵を採取
- 親鳥が年に1-2個しか産卵せず、孵化成功率が低い問題
- 卵をインキュベーター(人工孵卵器)に移送
- 手育て(hand-rearing)で雛を育成
- 「セーブ・ライフ作戦(ปฏิบัติการเซฟชีวิต / Save Life Operation)」として実施
タイの繁殖チームは、世界の動物保護専門家との情報共有を進めながら、最新の人工孵化技術を適用。結果として、タイ国内初のマラブー雛が無事に誕生し、現在も順調に成長している。
世界で4番目の人工繁殖成功施設
カオキアウ動物園の成功により、世界全体での人工繁殖成功施設は以下の4箇所となった。
- バンプラ水鳥繁殖センター(สถานีเพาะเลี้ยงนกน้ำบางพระ / Bang Phra Waterfowl Breeding Station、タイ)
- アッサム動物園(Assam State Zoo、インド)
- アンコール生物多様性保全センター(Angkor Centre for Conservation of Biodiversity、カンボジア)
- カオキアウ・オープン動物園(タイ・チョンブリ)
世界動物園水族館協会(WAZA)と東南アジア動物園水族館協会(SEAZA)のメンバー施設としても、カオキアウ動物園の今回の成功は組織全体の重要な達成として記録される。
環境省+タイ動物園機構の共同プロジェクト
事業を支援したのは、タイ環境天然資源省、タイ動物園機構(องค์การสวนสัตว์แห่งประเทศไทย / Zoological Park Organization of Thailand / ZPOT)、カオキアウ動物園の獣医チーム、飼育員チームの合同体制。スチャート大臣は「タイの絶滅危惧種保全における重要な一歩、全関係者の協力と熱意の証」と高く評価した。
カオキアウ動物園、東南アジア最大級の野外動物園
カオキアウ・オープン動物園は、チョンブリ県シーラチャ郡に位置する東南アジア最大級の野外動物園(Open Zoo)。総面積は約8,000ライ(約1,280ヘクタール)で、ライオン・トラ・象・キリン・サイ・カンガルー・絶滅危惧種など300種以上の動物を飼育している。タイ動物園機構が運営する公立動物園で、教育・研究・保全を3本柱としている。
バンコクから車で約2時間、パタヤから約30分のアクセスで、タイ人ファミリー・外国人観光客・学校団体・在留邦人ファミリーの定番のお出かけ先として親しまれている。
在留邦人ファミリーにとっての魅力的なお出かけ先
カオキアウ動物園は、在タイ日本人ファミリーにとって週末のドライブ・お出かけ先として人気が高い。入場料は大人220バーツ(約1,000円)、子供100バーツで、サファリ・トレイン乗車・ナイト動物園など複数の体験プログラムが用意されている。今回のマラブー雛の繁殖成功は、動物園の保全活動の見学を新たな魅力として加える事案となる。
雛の一般公開時期はまだ未発表だが、健康状態が安定すれば、数ヶ月以内に来場者に披露される可能性がある。
タイの絶滅危惧種保全、グリーンエコノミー戦略の一翼
タイ政府は「Bio-Circular-Green Economy(BCG)」モデルを国家戦略として推進しており、生物多様性保全と経済発展の両立を目指している。本日同日に発表されたアヌティン首相のパリでのフランス企業誘致()でも、クリーンエネ・バイオ産業がアピールポイントの一つだった。雛の人工繁殖成功は、タイの「保全先進国」イメージを国際的に強化する象徴的な事案となる。