タイ警察庁麻薬抑制局(บช.ปส.)は2026年5月25日、ルーイ県東北国境を入り口にバンコクまでヤーバ(覚醒剤錠剤)を運搬する組織犯罪ネットワークを摘発し、容疑者4人を逮捕、ヤーバ2,000万錠と運搬用車両6台を押収したと発表した。警察庁副長官サムラーン・ヌアンマー警察大将と麻薬抑制局長アチャヤン・クライトーン警察中将が共同会見し、米国麻薬取締局(DEA)とタイ軍特殊作戦コマンドとの三者協力で実施した作戦の成果を公表した。今回の組織は「ティーンエージャー(วัยรุ่น)」を運搬役に雇い、ガイド車と運搬車の2台一組で頻繁に経路と車両を変えながら捕獲を回避する高度な構造を持っていた。命令役は28歳のナラサック容疑者で、ティーン世代を雇用してリスクを分散していたとみられる。本サイトが5月23日に伝えたルーイ県ムアン郡での「ヤーバ2,000万錠+アイス2トン」の摘発に続く、第二弾の大規模摘発となる。
タイ警察+米DEA+特殊作戦コマンドの三者協力
今回の作戦は、タイ警察庁麻薬抑制局、タイ軍特殊作戦コマンド(หน่วยบัญชาการสงครามพิเศษ)、米国麻薬取締局(DEA)の三者協力で実施された。米国DEAは東南アジアの薬物密輸ネットワークの追跡に長年関与しており、タイ警察との情報共有が今回の摘発に直接寄与した。タイの主要薬物事案で米国機関と共同作戦が行われるのは、国際的な薬物犯罪ネットワークの追跡が複数国の連携を必要としていることを示している。
4人逮捕、ヤーバ2,000万錠+車両6台押収
タイ警察が押収した物品は次のとおり。
- ヤーバ(覚醒剤錠剤): 2,000万錠
- 運搬用車両: 6台
- 容疑者: 4人(うち1人は命令役の28歳ナラサック容疑者)
2,000万錠というのは末端価格で20億バーツ(約92億円)を超える規模で、タイ国内の薬物市場に流入していた場合の影響は極めて大きい。
「ティーンエージャー運搬役」の高度な手口
今回のネットワークの特徴は、運搬役にティーンエージャー(若年層)を起用していた点。タイの刑法では、薬物関連犯罪で18歳未満の少年が逮捕されると少年裁判所での処理となり、成人より軽い処罰になりやすい。組織はこの法的隙間を利用して、運転免許のある若年層を運搬役として雇い、捕獲されてもネットワーク本体への影響を最小化する仕組みを構築していた。
ガイド車+運搬車+経路と車両を頻繁に変更
運搬方法も洗練されていた。ガイド車(先導車)が運搬車の前を走行し、検問所の有無や交通状況を確認、リアルタイムで運搬車に指示を出す。経路は固定せず、毎回ルートを変更、車両も入れ替えるという徹底ぶり。賃貸倉庫を中継地として使用し、ルーイ県の国境付近で受領した薬物を一旦保管、別のチームに引き継いでからバンコクへ向かう流れ。こうした多層化で、1人の運搬役が捕まっても全体のネットワークが破綻しない構造を作っていた。
命令役は28歳ナラサック容疑者、組織構造を解明
逮捕された4人のうち、28歳のナラサック容疑者は組織の「命令役(สั่งการ)」レベルとみられる。ティーン世代の運搬役を雇用する人材調達と、ルートと車両の指示を出す中核機能を担当していた。警察は同容疑者の取り調べと、押収した6台の車両のGPS履歴・通信記録・銀行取引履歴の解析を進めており、上位の指示役と国際的な取引先の特定に向けて捜査が拡大している。
5月23日ルーイ県摘発と並ぶ、第二弾の大規模事案
本サイトでは5月23日に「ラオス国境沿いのルーイ県ムアン郡で軍-警察合同タスクフォースがヤーバ2,000万錠+アイス2トン押収、4人逮捕」の事案を伝えた。今回のイサーン薬物網摘発はその第二弾で、同じくルーイ県を入り口にした薬物流通の異なるネットワークを切り崩す形になった。タイ警察庁は5月以降の連続摘発で、東北部のラオス国境を通過してバンコクに流入する薬物ルートの遮断を急いでいる。
5月のタイ薬物摘発の連続報、本サイト累計
本サイトの2026年5月の大規模薬物摘発関連記事は以下のとおり。
- 5/23 ルーイ県ムアン郡: ヤーバ2,000万錠+アイス2トン(軍-警察合同)
- 5/24 チェンマイ・チェンダーオ: ヤーバ200万錠(国境警察335)
- 5/24 プラチュアプキリカン: トヨタヤリスひき逃げ→106万錠
- 5/24 スコータイ・トゥンサリヤム: ヤーバ200万錠(電柱衝突、運転手死亡)
- 5/24 チェンライ・メーチャン: ヤーバ113万錠(銃撃戦、運転手射殺)
- 5/25 ジョンプリ州プラチュアプキリカン: 105万錠(トヨタヤリス飲み逃げ)
- 5/25 本件: ヤーバ2,000万錠+ティーン運搬役+米DEA協力
タイ国内では5月後半に集中して連日の大規模摘発が報じられており、東北部から中部・南部・首都圏への薬物流入ルートに対する国際的な取り締まりが本格化している。本サイトでは今後の追加摘発と組織解明の進捗について続報を伝える予定。