タイ東部チャチェンサオ県の県庁前のジョギングコースで48歳の女性Aさん(仮名)が、男2人にドリアンの皮で顔を打たれた事件をめぐり、チャチェンサオ県警察本部副本部長のソムチャイ・ユーサワット警察大佐が5月19日に新しい見立てを明らかにした。犯人は強盗目的ではなく、「個人的なトラブル」で女性を狙ったとみられるという。
被害者の財布やスマートフォンが奪われていなかったこと、そして犯行の様子がたまたま居合わせた人を襲うというより、特定のターゲットを最初から狙ったように見えること。この2点が、警察が「通り魔ではない」と判断する根拠だ。ムアン・チャチェンサオ警察署の捜査チームは現場周辺と犯人の逃走経路に沿ってCCTVの映像を集中的に洗い直し、犯行グループの目星は付けているという。逮捕は近日中の見通しだ。
引っかかるのは、凶器が「ドリアンの皮」だったという点だ。5月から6月はドリアンが市場を占拠する季節で、皮自体は市場やゴミ捨て場でいくらでも手に入る。両手で握れるサイズで、表面のとげが鋭い。隠して持ち運んでも疑われにくい。事件発生時はもっぱら「タイらしい奇抜な犯行手口」として面白おかしく報じられがちな部分だったが、警察が「個人的怨恨」と読むようになると、ドリアンの皮を選んだ意図は、ぐっと粘っこい色を帯びてくる。
捜査の焦点は、犯人グループの逮捕に加えて、被害者周辺の人間関係に移っていく。タイの地方都市でジョギング中の女性が突然襲われた、という見出しだけ追うと「物騒な街だ」と身構えてしまうが、ふたを開けてみればごく個人的なもめ事が暴力に転化していた、というのが実態のようだ。事件としての怖さの種類が、初報と続報で大きく変わる類のニュースだ。


