タイの公的医療を支える看護師の初任給が月18,000バーツ(約8万円)しかない。一方、数日の研修を受けただけのボランティア看護師は月15,000バーツ。差は3,000バーツ、月1万3千円ほどしかない。この事実を5月18日にフェイスブックで投げかけたのは、ソンクラー県サバヤーン病院の元院長スパット・ハスワンナキット医師(นพ.สุภัทร ฮาสุวรรณกิจ)だ。
「現場の看護師の声を聞いてほしい」という前置きで始まる投稿は、タイの公衆衛生システムが抱える人員ピラミッドを淡々と並べた数字の列だった。
100万人いるとされる村のヘルスボランティア(อสม.)は月3,000バーツ。そのうち専門研修を受けた数十万人がいくらか上乗せをもらう。介護研修70時間を修了したケアギバー(CG)は数万人で、寝たきり患者を1人みれば月5,000バーツ。そして地方の保健所(รพ.สต.)や自治体の保健センターで働く看護師が1万5千から2万人いる。
そこに、4年制の看護学部を出て国家試験を通った「プロフェッショナル看護師」がいる。彼女たちの初任給が18,000バーツ。短期研修のボランティア看護師より、月たった3,000バーツしか高くない。
引っかかったのはここだ。看護学部の4年間と国家試験、臨床実習。そこに費やす時間と費用は、数日の研修とは比べものにならない。なのに月給差は外食2、3回分ほどしかない。プロとして資格を取った意味は、給与の上ではほとんど可視化されていないことになる。
スパット医師はこれを「タイ公衆衛生システムの大きな問題だ」と書いた。投稿は引用部分で途切れているが、現役・元職の医療従事者からは「だから辞める」「だから海外に出る」という反応が並ぶ流れになりそうだ。
タイは医療観光大国として知られ、バンコクの私立病院に日本人もよく通う。一方で、その輝かしい看板の足元にあるのが、地方の公立病院で夜勤を回す看護師たちの18,000バーツだ。
数字だけ見ると地味な投稿だが、医療現場で何が起きているかを知るには、この3,000バーツ差ほど分かりやすい指標もない気がする。
