タイ東部チョンブリ県のカオキャオオープン動物園で、世界的な絶滅危惧種オオトキ(Giant Ibis、学名 Thaumatibis gigantea)のひな鳥を、人工孵化器で孵化させることに成功した。動物園のナロンウィット・チョッチョイ理事長が5月19日に発表した。同園にとって初めての快挙で、約20年にわたる繁殖研究の積み重ねがようやく実を結んだかたちだ。
オオトキは体長およそ1メートルにも達する世界最大級のトキで、カンボジア・ラオス・ベトナム南部・タイにまたがる東南アジア固有種。IUCNのレッドリストでは「Critically Endangered(極めて深刻な絶滅危惧)」に分類されている。世界全体でも野生個体はわずか200〜300羽と見られていて、タイ国内では40年以上、野生での目撃記録すらない。事実上、ごく一部の飼育施設にしか残っていない鳥だ。
驚かされるのは、それを人工孵化器でひなまで持っていったというところで、20年という研究期間の長さがそれを物語っている。飼育下では自然孵化の難易度が極めて高い種で、卵を孵すまでにペアの選定・繁殖サイクルの観察・卵管理と、ひとつずつ条件を詰めていく必要がある。今回の成功は、ひな1羽の誕生という以上に、これから個体群を組み立てていくための入り口に立てた、という意味のほうが大きいのだろう。
カオキャオオープン動物園は、パタヤやシーラチャから車で30分ほどの場所にあるタイ最大級の動物園で、タイ動物園機構が運営している。広い敷地のなかで動物を開放的に飼育する「オープンザビ」スタイルで、家族連れにもよく知られた場所だ。今回のニュースは「観光地のすぐ脇で、世界レベルの保護研究が静かに進んでいた」ということでもある。
200〜300羽しかいない鳥のひな1羽。地味に見えるかもしれないが、この国の自然保護の手数を少しずつ積み上げてきた20年の話だと思うと、なんとも背筋が伸びる。次にカオキャオに足を運ぶなら、ぜひそのことを思い出してみたい。


