タイ政府が2026年FIFAワールドカップ(米加墨共催)の放映権交渉を続けているが、合意に至らなかった場合、サッカーファンはオンラインの代替チャンネルで試合を見ることになるかもしれない。首相府担当のスパマート・イサラパクディ大臣が5月20日にそう述べた。
タイ政府はこれまで「W杯は全国民が無料で見られる」ことを掲げてきた。5月12日の閣議でNBTC(国家放送通信委員会)向けに放映権獲得用の予算13億バーツ(約61億円)を承認している。ところが推定される放映権料は15〜16億バーツ。タイ国会のスポーツ委員会は17億バーツに膨らむと指摘していて、2〜4億バーツ足りない。
引っかかったのは、ここから先のシナリオが急にぼんやりすることだ。スパマート大臣は不足分の補填策を「検討中」とは言うものの、合意できなかった場合にファンが取る選択肢として、政府関係者自らがオンライン視聴に言及している。「無料放送維持を最優先」と言いながら、現実路線の含みを混ぜている、というのが正直な印象だ。
予算が13億バーツしかないことの背景には、タイの広告事情もあるとされる。W杯の試合はタイ時間でいうと深夜から早朝にかけてが多く、スポンサーや広告主にとってゴールデンタイムほどの旨味がない。広告収入で穴埋めしづらい構造で、結局は公費投入の規模が論争の的になっている。
W杯開幕は2026年6月11日。残り数週間で交渉は山場を迎える。アヌティン政権発足以来の公約だっただけに、政府は最後の調整を急ぐが、「全国民の無料視聴」を完全に維持できるのか、それとも一部試合は有料配信や公式アプリ経由に切り替わるのか。なんとも見えにくい局面に入った。