タイ民間航空局(CAAT)は5月13日、5月17日施行の改正ドローン規制を発表した。パイロット訓練の義務化・機体登録の必須化・オンライン飛行許可申請・罰金最大4万バーツなど7項目が柱で、駐在員や観光客がドローンを飛ばす際にも直接影響する重要な政策変更だ。ラリダ・プルドビヴァタナ副政府報道官は「航空安全基準の向上と商用ドローン使用の拡大を支援する」と説明した。
新規制7つの柱
今回の改正内容は、(1)パイロット訓練の義務化、(2)機体登録の必須化、(3)オンライン飛行許可申請、(4)飛行禁止区域の明確化、(5)Remote ID機能の有効化、(6)保険加入の義務化、(7)違反時の罰金最大4万バーツ、の7項目だ。
機体はカテゴリA(250g未満)・カテゴリB(250〜900g)・カテゴリC(900g以上)の3区分に分類される。カテゴリAは簡易登録のみで済むが、カテゴリBはNBTC(国家放送通信委員会)とCAAT双方への登録・保険加入・Remote ID有効化が必須となる。カテゴリC以上はさらにオンライン訓練修了証と特別許可が求められる。
機体登録と訓練の手順
機体登録はまずNBTC登録(購入後30日以内)から始まり、続いてCAAT登録で機体情報と所有者情報を届け出る。その後、保険加入(第三者賠償責任)とRemote ID機能の有効化を済ませ、オンラインで飛行許可を申請する。許可取得までは約1週間かかり、有効期限があるため年次更新が必要だ。
オンライン訓練はCAAT提供の無料講座で、約2時間の受講で修了できる。内容は航空法・安全規則・緊急時対応・禁止区域の認識・プライバシーと著作権など。修了するとCAAT公式の修了証が発行される。
飛行禁止区域と罰則
禁止区域は空港半径9km以内・軍施設や政府施設周辺・王宮や寺院周辺・人口密集地などが定められており、夜間飛行や人混みでの飛行も原則禁止だ。高度150m以下でも許可が必要になる。タイ全土の規制マップは整備中で、随時更新される予定だ。
罰則は登録なし飛行・禁止区域飛行ともに最大4万バーツで、禁止区域では機体没収も加わる。人身事故が発生した場合は過失致死等の刑事責任が問われ、航空法違反は懲役5年以下・罰金の対象となる。外国人観光客が違反した場合は強制送還の可能性もある。
急成長するドローン市場への対応
タイのドローン市場は2024年時点で約30億バーツ規模に達しており、2030年には100億バーツへの拡大が予測されている。農業ドローン(米作・果樹園・養殖)・建設ドローン(測量・施工管理)・配送ドローン・映像制作(観光地・広告・映画)・医療配送(離島・山岳地帯)など幅広い分野で需要が伸びており、タイ政府は「ドローンハブ」化を目標に掲げている。
規制の変遷を振り返ると、2017年の初版は基本登録のみ、2020年改正で商用ドローンへの対応が拡大、2024年改正でRemote IDが導入され、今回の2026年5月改正で訓練の義務化とオンライン許可申請が加わった。今後はAI飛行制御・自動運航への対応改正も予定されている。
業界と日本人駐在員への影響
今回の規制はプロドローンオペレーターの認定強化につながる一方、一般市民の入門ハードルを引き上げる。訓練機関や保険業界には新たな需要が生まれる。日本(厳格な登録制)・米国(FAA規制)・EU(CEマーク必須)と比べ、今回の改正でタイは先進国水準に近づいた。
タイで業務用ドローンを使用する日本人駐在員や、観光でドローンを持ち込む旅行者は、5月17日の施行前に登録手続きを確認し、オンライン訓練の受講と保険加入を済ませておく必要がある。飛行許可申請は承認まで約1週間かかるため、撮影計画がある場合は早めの手続きが不可欠だ。