タイのアヌティン・チャンウィラクン首相が5月13日夕方、プーケット県のフリードムビーチを現地視察し、約20年にわたって続いてきた公共ビーチへの不法侵食と利権ビジネスを「刑務所行きにすべき事案だ」と厳しく非難した。300段に及ぶ階段を建設するほどの大規模工事が放置されていたとして、現地当局の対応にも踏み込んだ怒りをぶつけた。日本人観光客が多いパトン地区のすぐそばで起きていた長年の問題で、今後の摘発の行方は在タイ日本人の関心事でもある。
アヌティン首相が現地視察、ヘリ移動で18時到着
アヌティン首相(内務大臣兼任)は5月13日18時、プーケット国際空港からヘリコプターでフリードムビーチへ移動した。場所はプーケット県カトゥー郡パトン区。観光客に人気のパトン繁華街のすぐ裏手にあたるエリアで、首相はプーケット市郡長から侵食事案の経緯について報告を受けた。同行する捜査陣に「公共ビーチに何十年も手をつけてきた連中は刑務所に入れるべきだ」と語り、現場の取り締まりに自ら踏み込む姿勢を示した。
侵食は2009年から、店舗・レストラン・外国人への賃貸まで
プーケット市郡長の報告によると、フリードムビーチへの侵食は仏暦2552年(西暦2009年)ごろから始まり、約20年にわたって続いてきた。観光業の収益を目的に店舗・レストランが無許可で展開され、さらに事業権の賃貸や外国人への売却まで行われていたという。公共ビーチで本来は誰でも自由に出入りできる場所のはずが、実質的に「有料エリア」化していた構図だ。
入場料100-300バーツ、300段の階段、23件の起訴
侵食事業者は、ビーチへ降りるための通行料として観光客から100〜300バーツ(約490〜1,460円)を徴収していた。さらに、観光客を呼び込むため、ビーチまで降りる300段の長大な階段まで建設していたという。プーケット県知事が厳格な取締りに乗り出した結果、これまでに23件の刑事訴訟が起こされた。アヌティン首相は「これだけの規模の工事を、現場の役所が知らなかったとは信じがたい」と現地当局の責任にも踏み込んだ。
アヌティン首相「住民は怖がる必要はない」と謝罪
アヌティン首相は視察の場で、現地住民に対して「政府の対応が遅れて申し訳ない」と謝罪。続けて「住民の皆さんは何も恐れる必要はない」と語った。現地で恐れられていた「有力者・マフィア」については、すでに刑事手続きを始めているため、今回の視察では直接対峙する場面はなかったと首相自身が説明した。
関連背景
フリードムビーチはパトンのメインビーチ南端にあり、白砂と岩礁が美しい「秘密のビーチ」として日本人ガイドブックでも紹介されてきた場所だ。今回の摘発で、通行料徴収や違法店舗の運営が今後止まる可能性が高い。観光客にとっては、長らくの「不透明な料金体系」が改善される一方で、ビーチへの導線そのものが整理されるまで一時的に立入規制が出る可能性もある。プーケット旅行を計画している場合は、現地ツアー会社や宿泊先の最新案内を確認したい。




