タイ東北部ウボンラチャタニ県のバンタリック郡で5月13日、債権者の男が娘の借金回収にしくじり、代わりに74歳の母を斧で斬りつけて殺害する凶悪事件が起きた。借金は約10万バーツ(約45万円)。タイ地方部に根強く残る個人間融資のトラブルが、最悪の形で噴出した形だ。在タイ日本人が地方を旅する場面でも、現金トラブルの背景にこうした暴力沙汰がある現実を頭に置いておきたい。
寺院へ向かう道路で発見された遺体
事件は同日、ウボンラチャタニ県バンタリック郡コーラーン町のバーンコーラーン集落で発生した。事件を最初に把握したのはバンタリック警察署の捜査担当ノーイ警部補。寺院ワット・カオサンソンチャラーンへ向かう道路の上で、74歳のサンウィエンさんが大量の血を流して倒れているのが見つかった。白黒の花柄シャツに茶色のシン(タイ伝統巻きスカート)姿で、青と白のホンダ・ウェーブのそばに横たわっていた。バクパームー署長以下捜査陣・医師・救助隊が現場検証に入った。
首に斧の刃傷2か所、頸動脈断裂
検視によると、サンウィエンさんは首を斧で2回斬られ、頸動脈が断裂して失血死していた。死亡推定時刻は発見から1〜2時間前。現場で目撃者として警察の事情聴取に応じた70歳の隣人プローンさん(仮名)が、近隣で起きた金銭トラブルの背景を証言した。
娘の借金回収できず、母から取ろうとして逆上
警察の現場発表によると、被害者の娘がこの債権者から約10万バーツを借りており、担保にしていた土地は別の債権者にすでに差し押さえられていた。回収のあてを失った債権者は、娘ではなく母のサンウィエンさんを追って金を要求したが、母も支払う能力はなく、激高した男が斧で首を斬りつけたとみられている。回収不能の借金が母娘の縁を通じて生命を奪う結末になった。
タイ地方の私的金融トラブルの闇
タイ地方部では、銀行融資にアクセスしにくい層が個人金融業者(ノックィン、ノックロンと俗称)から高金利で借りる慣行が根強い。返済が滞ると、債務者本人だけでなく家族まで取り立てに巻き込まれるケースは多く、暴力沙汰や脅迫に発展する例も後を絶たない。今回のように担保資産を別債権者に取られて回収不能になり、関係のない家族が標的になる構図は、地方部の融資環境のもろさを象徴している。
在タイ日本人が頭に入れておきたいこと
在タイ日本人が直接巻き込まれる事件ではないが、地方部での旅行・滞在中に金銭トラブルや家庭内紛争に居合わせるリスクは皆無ではない。バイクで移動する地元住民を狙った金銭目的の犯行は、東北部や北部の一部地域で散発的に報じられている。地元での換金所利用や宿の選び方、夜間の移動経路など、基本の防犯意識を持っておきたい。事件は捜査が続いており、容疑者の身柄確保に向けた追跡が進んでいる。