タイ国家水資源管理局(สทนช./ONWR)と関連機関が2026年5月4日にまとめた水利用状況によると、全国の主要貯水池の利用可能水量は41%まで低下、中部地方では33%にまで落ち込み、雨季入り前の綱渡り状態が続いている。先月4月20日時点で全国45%・中部&東部40%割れと報じられた状況から、わずか2週間で各地区とも1〜7ポイントの低下が見られた。
地域別の内訳では中部地方の悪化が最も深刻で、月初の35%から33%へ2ポイント減少。中部はチャオプラヤ川流域の主要農業地帯で、米作の田植え時期と重なるため、水不足の影響が最も大きい。続いて東北部では中型貯水池67か所のうち30%以下が30か所超に増え、特定33地域が農業用水の確保が困難となる「逼迫レベル」に入った。
タイ気象局は5-7月のエルニーニョ突入確率を61%と発表しており、雨季が遅れる/雨量が少ない可能性を警告している。実際の雨季入り(公式発表)は通常5月中旬だが、現在の暑さ・乾燥傾向は2025年以前の平均と比べて遅延気味。気象局は5月6-8日に南部で大雨予測を出しているものの、北部・中部・東北部の水源回復には早急に至らない見通しだ。
タイ政府は対策を加速。2026年4月にスーパーエルニーニョ備え4戦略を発表、人工降雨実施や農家への作物転換支援を進めている。さらに5,000億バーツ借入政令による緊急融資準備、2027年深刻干ばつ警告でエルニーニョ2-3年継続予測も併せて打ち出されている。観光地でもカオヤイ国立公園が4月下旬にテント場閉鎖した事例があり、水不足は農業を超えてレジャーや日常生活へ波及している。
在タイ日本人にとっての影響は3つ。第1に水道供給。バンコクやチャチェンサオ・サムットプラカン等中部圏では大規模な断水は今のところ起きていないものの、節水意識の啓発が当局から呼びかけられている。第2に電気代。水力発電比率の低下は火力発電依存度を高め、電力会社の購買コスト→電気料金を押し上げる方向で作用する。第3に農産物価格。米・果物・野菜の出荷量減少で食材価格が上昇する可能性があり、駐在員家庭の食費にも影響が及ぶ。
水資源管理局は雨季入り後の貯水池回復シナリオと並行して、農家への作付け制限・代替作物推奨、工業用水の優先順位調整、観光地の節水運動などを展開している。雨季が予定通り5月中旬に本格化するか、エルニーニョによる遅延が深刻化するかが、今後の局面を分ける分水嶺となる。