西日本新聞が2026年5月3日、JR西日本がかつて運用していた寝台特急車両(旧ブルートレイン車両)が、タイ国鉄(SRT)で国際快速列車として第二の人生を歩み、連日ほぼ満席で運行している様子を伝えた。バンコクと隣国ラオスの首都ビエンチャンを結ぶ国際快速列車に、日本時代の設備を残した寝台車・座席車が連結され、外装は明るいグレーを基調に窓回りを赤く彩ったタイ国鉄カラーへ塗り替えられている。
譲渡の経緯はJR西日本が2004年と2008年の2回にわたり、計52両をタイ国鉄に無償譲渡したもの。国際貢献の一環で、譲渡された車両には東京-下関間の「あさかぜ」(2005年廃止)、京都-南宮崎間の「彗星」(同年廃止)、京都-長崎間の「あかつき」(2008年廃止)といった伝説的寝台特急に充てられていた車両が含まれる。日本国内で姿を消した寝台特急の車両がタイで形を変えて生き続けている格好だ。
国際快速列車「Rapid 133/134号」は2024年7月19日に運行を開始した。バンコクのクルンテープ・アピワット中央駅(旧バンスー中央駅)を21時25分頃発、翌朝9時05分頃にビエンチャン郊外のカムサワート(Khamsavath)駅へ到着するダイヤで、博多-京都間にほぼ匹敵する約650kmを11時間40分ほどかけて走行する。タイ国鉄とラオス国鉄の連携強化により実現した路線で、観光促進と物流改善を目的に位置付けられている。
編成は2等エアコン寝台30席、2等エアコン座席64席、3等扇風機座席152席で構成され、寝台部分にあたるのが日本譲渡車両のメインだ。車内には「おす」など日本語の表記がそのまま残っている箇所もあり、乗車した日本人観光客が「日本そのもの」と驚く光景が現地レポートで度々紹介されている。
人気の理由として現地で挙げられるのは、第1にタイ-ラオス間の国際移動需要の堅調さ、第2に日本人鉄道ファンを中心とする「現役ブルートレイン体験」の希少価値、第3にタイ・ラオス両国の地元利用者にとっての安価で快適な夜行手段としての実用性、の3点だ。寝台席を中心に予約は数週間先まで埋まる傾向が報じられている。
カムサワート駅自体はビエンチャン中心部から約9kmの郊外に位置し、駅では洗面・身支度などの基本施設が利用できる。市内へはタクシー・トゥクトゥクなどで移動する形が一般的だ。日本側からタイ経由でラオスへ抜けるルートとして、バンコク発の夜行で朝にラオスに到着できる利便性が高く、在タイ日本人の連休利用や日本人鉄道ファンの巡礼ルートとしても機能している。
JR西日本側も「日本で多くのお客様にご利用いただいた車両が、海を越えて好意的に受け入れられ、両国の友好と交流に役立っていることを誇りに思う」とコメントしている。日本の鉄道遺産が国境を越えて愛されている希少な事例として、今後も乗車レポートと記録の蓄積が続きそうだ。


