西日本新聞が2026年5月3日、日本のJRで活躍した寝台客車(旧ブルートレイン車両)がタイ国鉄でタイ-ラオス国際夜行列車として第二の人生を送り、連日ほぼ満席で運行している様子を伝えた。バンコクと隣国ラオスの首都ビエンチャンを結ぶ国際快速夜行列車に2〜3両が連結され、日本時代の懐かしい設備をそのまま残しつつ、外装は鮮やかなタイ国鉄カラーへ塗り替えられている。
譲渡の経緯は2004年に遡る。JR西日本から12系・14系座席車、14系・24系の開放式B寝台車・A寝台車を中心に約40両がタイ国鉄(SRT)へ売却され、現地で改装・整備のうえ実用車両として運行を開始した。九州発着のブルートレイン(「はやぶさ」「富士」「あかつき」「彗星」等)の運用に充てられていた車両も含まれており、廃止された寝台特急の車両がタイで形を変えて生き続けている格好だ。日本の鉄道ファンにとっては「もう一度乗りたい車両」がタイで現役というロマンに溢れる存在となっている。
運行ルートはバンコク・フアランポーン駅やバンスー中央駅を起点に、タイ東北部のノーンカーイ国境駅を経由してラオス側へ越境。2024年7月にはビエンチャン郊外にカムサワート(Khamsavath)駅が新設され、バンコク直通の国際Rapid列車がここまで延伸された。タイ-ラオス国境鉄橋(タイ-ラオス友好橋)を渡る区間が魅力的で、列車内には日本時代のままの「JR」マークや車両形式表記が残っており、乗車した日本人観光客が「ブルートレインだ!」と驚く光景が現地で度々報告されている。
連日満席の理由は3つある。第1にタイとラオスの国際移動需要の急増。陸路国境のノーンカーイ-ビエンチャン経由は格安航空が伸びてもなお人気のルートで、ラオス側の中国-ラオス高速鉄道(ヴァンビエン・ルアンプラバン経由)との接続も利便性を高めている。第2に日本人鉄道ファンを中心とする「乗り鉄」需要。世界唯一現役で走るブルートレイン車両として、SNSや乗車レポートで盛り上がっている。第3にタイ・ラオス両国の地元利用者が選ぶ「安価で快適な夜行移動手段」としての実用性だ。
在タイ日本人にとっての注目点は、休日や連休を利用したラオス周遊の格安・体験型移動手段として活用できる点。バンコクから乗車すればバンコクの夜とビエンチャンの朝を一晩で体感でき、車内では昭和の日本国鉄時代をそのまま味わえる。寝台車は満席が続いているため、予約はタイ国鉄公式サイトまたはバンコク中央駅窓口で2〜4週間前に確保するのが現実的だ。タイ国鉄の予約画面では満席日が灰色表示になり、予約の可否が一目で分かる。
老朽化が進む車両の維持はタイ国鉄の鉄道整備工場が担当しており、部品調達やオーバーホールの技術的課題は年々増している。タイ国鉄は中国製・韓国製の新型寝台車を順次導入しているが、日本製の40両は「故障が少なく快適性が高い」「乗客に好評」として、当面は主力国際列車車両として継続運用される見通しだ。日本の鉄道遺産が国境を越えて愛されている希少な事例として、今後も記録と乗車レポートの蓄積が続きそうだ。