タイ高等教育・科学・研究・イノベーション省(อว.、MHESI)と国家科学技術開発庁(NSTDA / สวทช.)、傘下の国家電子コンピューター技術センター(NECTEC / เนคเทค)が2026年5月1日、医療AI開発のための国家プラットフォーム「Medical AI Consortium」を正式に発進した。300万枚を超える医療画像データを共有し、8つの主要医学部とNECTECのスーパーコンピュータ「LANTA」を組み合わせて、海外依存からの脱却と国家戦略「Wellness Thailand」推進を加速する狙いだ。
開所式ではヨッチャナン・ウォンサワット副首相兼MHESI大臣が「タイのMedical AIの方向性」と題して基調講演を行い、AI for ALL方針と「Wellness Thailand」を二本柱に、医療体制を「修理する医療」から「健康増進する医療」へと転換すると宣言した。タイ国民のデータをタイ国内で扱い、データの主権と安全を確保したうえで、タイ人に最適化されたMedical AIを開発するという姿勢を強調した。
コンソーシアムは、マヒドン大学医学部ラマティボディ病院、NSTDA、保健省医薬部の3機関が創設し、現在は8機関までネットワークが拡大している。マヒドン大、チェンマイ大、コンケン大、プリンス・オブ・ソンクラ大、バンコクのヴァチラ病院、チュラロンコン大学医学部などが参加し、地域横断で医療AIの研究・実装を進める体制が組まれた。
技術基盤としては、医療画像の共有プラットフォーム「Medical AI Data Sharing Platform」に既に300万枚以上の画像が集約されており、2569年(西暦2026年)内にさらに79万枚を追加予定。試験基盤としては、スーパーコンピュータLANTAの高性能演算と、医療機器ソフトウェアの試験ラボ「SQUAT」がタイFDAの基準と整合する形で稼働する。今後はMedical AI Benchmarkと呼ばれる性能評価システムも整備される。
NECTECのチャイ・ウッティウィワット所長によると、コンソーシアムから生まれたMedical AI製品はすでに10モデルに達しており、うち2製品が当局への登録準備に入っている。臨床現場での即戦力を狙った画像分析ツール「RadiiView」と、AIモデルを簡易に開発できる「NomadML」が同センター発の主要ツールだ。
タイ政府は近年、デジタルウォレット、PromptPay、Mor Promアプリなどのデジタル公共サービスを次々と打ち出してきた。今回のMedical AI Consortiumはその医療版に位置づけられ、海外メーカー依存の医療AIをタイ国内で代替することで医療コスト削減と人材育成の両立を狙う。在タイ日本人にとっても、Mor Promアプリ等で利用する医療データの管理体制が今後どう進化するか、駐在員の医療コスト・診療体験に関わる長期的な変化につながるテーマだ。