タイ・タマサート大学法学部のプリンヤー・テワナルミトクル准教授は2026年4月28日、罰金を払えず収監されている貧困受刑者を「労働で罰金を返済して釈放する」タイ初のプログラムが始動し、まず4名がパトゥムタニ拘置所から出所したと自身のFacebookで発表した。
タイでは罰金を支払えない者は1日500バーツ換算で日数分を服役することになる。法律上は罰金の代わりに社会奉仕活動で代替する仕組みもあるが、実務では裁判所がほとんど許可せず、結果として「ただ金がないというだけで収監される人」が年間4万から5万人に及ぶとされる。プリンヤー教授はこれを「真の意味での貧困による収監」と表現し、長らく問題視してきた。
新プログラムの仕組みは単純である。教授とゼミ生で構成される「社会のための法律サービス」のチームがファンドを設立し、ファンドが罰金を一括で支払って受刑者を釈放させる。同時に就労先を紹介し、釈放された人が働いて得た賃金を、月々ファンドへ返済する。借金返済の形で罰金分を完済すれば、その人の前科処理に近いやり直しが完了する仕組みだ。
第一弾の対象者はパトゥムタニ拘置所で罰金未払を理由に収監されていた4人。本人の応募に基づき、ファンドが罰金分を立替え、4月28日に身柄が解かれた。今後、釈放された4人は紹介された職場で働き、収入の一部からファンドへ返済する流れに入る。
日本にも同様の「労役場留置」という制度はあるが、貧困者を「働きながら自力で釈放される」民間ファンドが具体的に動かす事例はまれだ。タイのこの試みは、刑務所の過密対策、再犯防止、生活再建という3つの効果を同時に狙ったもので、教授とゼミ生という大学発の動きから始まったところに新しさがある。プリンヤー教授は今後の展開として、対象者の拡大とファンド規模の拡大を計画していると示唆している。