タイ警察犯罪鎮圧局が4月27日、政府機関のロゴと公務員の制服まで揃えて架空の発注業務をでっち上げ、請負業者17社から実害600万バーツ(約2,800万円)を騙し取った元公務員ワス氏(姓非公開)をラヨーン県のレストラン前で身柄拘束した。偽造された契約書の額面は合計3億5,893万6,315バーツに達する。
警察によれば、ワス氏は2025年3月から大手請負会社に接近し、「政府が発注したものの業者が放棄したプロジェクト2件」を仲介すると装った。被害企業の代表を呼び出し、政府職員の制服を着用した本人が、政府機関名や公印を模した偽契約書に署名させる。狙いは仲介手数料の名目での現金。書類の見た目を整えて信用させ、業者側から現金を引き出す手法を繰り返していた。
被害は重ねるごとに膨らんだ。集計時点で偽契約書は17社分、額面合計358,936,315バーツ。一方、実際に手渡された現金は600万バーツに上る。仲介手数料を装って受け取った金で、契約そのものは架空という構図のため、全額が損害として残る。
逮捕令状は刑事汚職・職権乱用裁判所(刑事訴訟J.8/2569、4月21日付)で発出された。罪状は「共同詐欺」「公文書偽造・行使」、そして「公務員でない者が公務員の地位を装って利得を求めた」公務員身分詐称が並ぶ。容疑者はラヨーン県ムアン郡ヌーンプラ地区に潜伏先を移しており、警察は対象車両を尾行したうえで、飲食店前で身柄を確保した。
タイでは公共事業の発注関係を装った詐欺が定期的に摘発される。今回は元公務員ということで、書類フォーマットや署名様式、印影の作り込みを「内部の感覚」で再現できた点が、17社が連続で引っかかった一因とみられる。建設請負業界では「政府の仕事は受注すれば確実に売上になる」という前提が強く、提示される話に乗ってしまう構造が背景にある。
日系のゼネコンや設備工事会社もタイで請負契約に応じる場面は多いが、相手が政府機関を名乗る個人で、現金や手数料の前払いを要求する局面では警戒が要る。本件は印影と制服まで揃えていた手の込みようで、書類の出所が発注省庁の公式チャネルかどうか、印鑑証明や公務員IDの裏取りを怠ると、600万バーツ級の損失が発生し得ることを示している。