タイ東北部ウドンターニー県で4月26日昼、フードデリバリーアプリで配達を頼んだ24歳の看護師女性が、配達後に帰らない男性ライダーから「部屋の猫を見せて」とチャットで持ちかけられ、恐怖で警察に通報する事件が起きた。男性ライダーは警察の通報を察知してバイクで逃走したが、女性側は防犯カメラ映像とチャット内容を証拠として残しており、警察は男に出頭を要請している。
通報は同日13時、ウドンターニー警察署のサタポン・サワサディ警察大尉のもとに入った。場所は同市内の3階建て寮。被害者のAさん(仮名・24歳)はウドンターニーの公立病院で働く看護師で、勤務後に部屋でフードデリバリーを注文していた。配達自体は通常通り終わったが、ライダーがその後も寮の外で待機し、アプリのチャット機能で「部屋に上がって猫を見せてほしい」と書き込んできた。
Aさんは身震いしながら警察を呼び、応対した警察官に経緯を説明した。手元には2つの動かぬ証拠があった。1つは寮の防犯カメラ映像で、ライダーが配達後も寮の前にとどまる姿が映っている。もう1つはチャット履歴で、配達完了通知のあとに「部屋に上がってもいいか」「猫を見たい」というメッセージが時系列で残っていた。
警察官が現場に到着した時点で、ライダーは女性が通報したことを察知してバイクで逃走していた。後の調べで男性はティーラワット(姓非公開)と判明している。警察はバイクの追跡を諦め、代わりに男の登録携帯電話に直接連絡を取り、署に出頭して動機・目的を説明するよう求めた。
タイのフードデリバリー業界は2020年のコロナ禍をきっかけに急拡大し、現在はLineman、FoodPanda、Grab、Robinhood、Shopee Foodなど複数アプリが市場を奪い合っている。ライダーは個人事業主の登録制で、女性客の住所と部屋番号を配達のたびに知る立場にある。アプリ各社は配達後の不要なメッセージや個人連絡を禁止しているが、実際にはチャット機能を使って配達後にコンタクトを試みるライダーが少なくないと、過去にもSNSで断片的な訴えがあった。
ウドンターニーは東北部の中堅都市で、独居の女性看護師・教師・公務員が寮に住む形が一般的だ。配達員に部屋番号まで伝わる構造のため、地方都市の独居女性にとって配達アプリの安全機能は実質的なライフラインになる。今回の事件は被害が直接の物理的危害に至る前に女性側が警察に通報した点で、警察にとっても配達員犯罪の初期段階を立件できる珍しいケースになる。
警察は男から事情を聞いた上で、刑事事件としての立件可否を判断する。タイの刑法上は明確な「ストーキング罪」がまだ存在しないが、強要罪や住居不法侵入未遂、個人情報の不正利用に該当する場合がある。アプリ事業者側にも、ライダーのチャットログを警察捜査に提出する義務が課される可能性が高い。
在タイ日本人女性、特に駐在員家族や留学生の単身世帯にとっても、配達アプリ経由で部屋番号が知られる構造は同じだ。今回の事件以降、配達員の身元確認、配達場所をエントランス止まりに指定する設定、配達完了後のチャット拒否設定の確認は、現地で生活する日本人女性が改めて見直すべきポイントになる。