タイ警察庁経済犯罪取締部第1課(สอท.1)は4月26日、ブランド代行販売を装った大型詐欺事件の告発を受理した。著名なセレブリティ、パッタナー・ブンデート氏(元上院議員プラソンサック・ブンデート氏の長女)が医師、歯科医、実業家計約100人の被害者を率い、夫婦経営のオンラインブランドショップに対する集団訴訟を提起した形となる。被害総額は1億バーツ(約4億9500万円)を超えると見られる。
容疑者はナット氏とポン氏(いずれも仮名)夫婦で、人気ブランドのオンラインショップを通して買取・販売・代行販売を運営していた。被害者らは時計、ハイブランドバッグ、ジュエリーなどを夫婦に預けて販売を委託したが、売却後の代金が支払われない、もしくは「販売済みと連絡しながら実際は商品が依頼者に戻っていない」というケースが続出していた。
夫婦の手口で特に悪質とされるのは、著名司会者(พิธีกรคนดัง)の名を口実に客から信用を得る点である。「○○司会者から預かったブランド品の出品です」と言って人気ブランドの偽オーダーを生み出し、客にクレジットカードでの即時決済を促す「オーダー・ティップ(架空の注文)」スキームを多用した。事後に発送はされず、返金にも応じない構図だった。
事件は数年単位で継続していたとされ、警察によると被害者の社会的地位は医師・歯科医・公認会計士・芸能人マネージャーなど多岐にわたる。タイの上流社会・芸能社交界で広く受け入れられていた業者だっただけに、口コミと身分の信頼を悪用した古典的な巧妙詐欺と評価されている。
被害者代表のパッタナー氏は、警察の経済犯罪取締部第1課課長シリワット警察少将と捜査担当のクルークライ警察中佐に直接面会し、詐欺・横領・偽造文書(架空注文書)・コンピュータ犯罪法違反など複数の罪での立件を求めた。1人あたりの被害額は数百万〜数千万バーツで、最大被害者は単独で2,000万バーツ近い損失を出していた。
タイの上流ブランド市場は富裕層・芸能人のセカンドハンド需要が大きく、信頼関係をベースにしたC2C取引が活発である。今回の事件で告発側の医師グループには日本人駐在員家族とも社交圏が重なる人物が含まれており、ブランド代行販売を介した類似スキームが他のオンラインショップにも存在する可能性が示唆されている。