カンボジアの閣議は4月24日、18歳から25歳までの男性に2年間の兵役を義務付ける新徴兵法を承認した。8章20条で構成された草案は、2006年制定だが施行に至らなかった旧法を置き換える内容となる。フン・マネ首相は2025年7月時点で2026年から徴兵法を施行すると表明しており、4月24日の閣議承認はその実施に向けた最終調整段階となる。
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新法の背景には、2025年に2回発生したタイ・カンボジア間の国境戦闘がある。両国を合わせて10万人以上の住民が避難を強いられ、カンボジア軍人と民間人約100人が死亡した。2025年12月の停戦合意以降は本格的な戦闘は再発していないが、シーサケート県・チャンタブリ県・サケオ県の各国境ポイントで小競り合いが続いている。
旧2006年法は最大徴兵年齢を30歳と定めていたが、実装されないまま20年が経過した。新法では年齢上限を25歳に引き下げ、若年層の集中投入を可能にした。女性については自発的志願を前提とする任意制度として位置付けられる。施行細則と免除規定の運用がカンボジア国内の政治・労働市場に与える影響は今後の発表を待つことになる。
タイ側にとっては、隣国の軍事力強化が国境地帯の戦力バランスに直接影響する事案となる。2026年4月のMOU44(海上境界画定の覚書)廃止と並行する形で、両国の安全保障政策が新フェーズに入った印象は強い。在タイ日本人の生活への直接影響は限定的だが、観光・物流ルートでの追加検査や陸路通関時間の長期化は想定される。
カンボジア側はフン・セン上院議長(前首相)の長男フン・マネ首相主導で、軍人事と国防予算の拡張を進めてきた。徴兵制度導入は対外的な抑止力強化と国内の若年層雇用統制を兼ね備える政策で、賃金が低水準に据え置かれているカンボジア軍の規模拡大に直接寄与する。
国際的には、東南アジアで徴兵制度を採るのはミャンマー・ベトナム・タイ(くじ引き徴兵)・シンガポール・北朝鮮(東アジア)などに限られ、ASEAN内でカンボジアが正式な徴兵国に加わる形になる。タイにとってはカンボジアとの国境緊張が長期化する可能性を意識した防衛・外交設計が今後の焦点となる。


