タイ警察地方第2区はブラパー軍管区の協力を得て4月25日、サケオ県アランヤプラテト郡パンスーク区を実地調査し、BL(ボーイズラブ)シリーズの監督がサトウキビ畑越しの裏ルートでカンボジアに連れ去られ、ポイペトの詐欺コールセンターで強制労働させられていた事件の現場を公開した。被害者の監督と側近は最近解放され、タイに帰国している。
副司令官のティティウット・スリヤチャイ警察少将によると、勧誘は「投資ジャンルの研修」を口実に行われ、応募者は事前のオリエンテーション参加→国境越え→ポイペトの拠点で詐欺業務を強要される構図だった。BL監督が標的になった理由は明示されていないが、エンタメ業界・SNSの広い人脈が詐欺ターゲットの取り込みに使えると組織側が判断した可能性が指摘される。
国境越えの中継点はパンスーク区とクロンナムサイ区のサトウキビ畑とされる。乾季には水路の障害が消え、徒歩で国境を越えられる地形がポイペトの組織に悪用されてきた。同地域は過去にも複数回コールセンター詐欺ネットワークの「人を運ぶ通路」として摘発されており、農地の散在性と監視カメラの欠落が利用される構造的な問題が浮き彫りになっている。
組織は「ナイ・ムー(豚さん)」と呼ばれるネットワークが中核で、地方の元公務員数人が出入国の手引きや書類偽造に関与した疑いも浮上した。該当する元公務員は既に職務停止処分となり、現在は警察と内務省が関与の事実関係を調べている。地方役所の出入国関連業務がどこで毒され、どこで通常運用されているかを線引きするのが捜査の主軸となる。
タイ警察は「高報酬の海外就労」「研修参加→現地配属」型のオファーには警戒を呼びかけている。コールセンター・スキャマー被害者は2024年以降数千人規模で確認され、国境警備とSNS監視に予算を集中投入している段階だ。サケオ・ヤラー・チェンライの国境地帯は特に追跡対象とされる。
在タイ日本人で副業を勧誘されるケースも報告されている。SNSやメッセンジャーアプリ経由で「タイ語学習を活かしたコールセンター業務」「投資研修込みの月収50,000バーツ」など現実離れした条件提示があった場合、勧誘者の身元と就業ライセンスを在タイ日本国大使館の領事サービスで確認するのが安全策になる。