タイ首相府のラリダー・プロットウィワッタナー副報道官が4月24日に発表した2026年3月の輸出統計によると、タイの月次輸出額は351.571億米ドル(約1兆874億バーツ)に達し、月間ベースで史上最高を記録した。前年同月比プラス18.7%と、21カ月連続の拡大となる。石油関連・金・戦略物資を除いた基準でも19.3%増と、数字のインパクトは同水準だ。
牽引役は工業製品で24カ月連続の伸び、3月は前年比プラス21.4%だった。品目別では携帯電話関連部品が166.6%増、PCとその部品が34.2%増、金を除く宝飾品が86.4%増と、AI・データセンター投資の世界的な拡大がタイの輸出ラインに直接流入している構図を示す。農産物では生ドリアン、生マンゴスチン、ペットフード、鶏加工品、砂糖、ハーブ香辛料が多市場で底堅く伸びた。
国別では米国向けがプラス41.9%と突出し、以下EU(プラス21.9%)、ASEAN5カ国(プラス25.0%)、日本(プラス9.1%)と続く。南アジアはプラス123.3%、オーストラリアはプラス56.2%と新興市場の二桁後半〜三桁の伸びが目立ち、輸出先の地理分散は進んでいる。
一方で輸入も強く、1〜3月の累計では輸出が961.699億ドル(プラス17.6%)に対して輸入は1056.464億ドル(プラス32.4%)に膨らみ、貿易赤字は94.766億ドルに達した。輸入の伸びは設備投資の動きと在庫積み増しが背景とみられるが、短期的には経常収支の圧迫要因となる。
ラリダー副報道官はホルムズ海峡周辺の緊迫で中東市場の縮小が始まっていること、エネルギー価格の変動、米国が検討中の新たな通商措置を主要リスクとして挙げた。中東向け輸出の伸びは他地域ほど強くなく、物流ルート変更のコストが上乗せされ始めている。
政府は新規市場開拓と競争力ある品目への集中支援で勢いを維持する方針で、PC・携帯・宝飾・農産品の四つが引き続き牽引することを前提にしている。「史上最高額は世界市場でのタイ製品の潜在力を映している」と副報道官は総括した。駐在日本企業にとっては、タイ製電子部品のAI特需が続くか、タイバーツ高と輸入拡大でコスト・為替面の痛みが先行するかが当面の論点となる。