タイのエネルギー省エークナット・プロームパン相が23日、電気代を大幅に引き下げる支援策を来週の閣議に上程すると発表した。柱となるのは、月の電気使用量が200単位(kWh)以下の世帯について、1単位あたりの電気代を3バーツ以下に抑えるというものだ。
対象は住宅用契約の中でも月の使用量が少ない層で、エネルギー省の試算で全国およそ1,430万世帯。これはタイ全体の家庭用電気契約の約62%にあたる。地方の家庭では月の平均使用量が190単位前後という統計もあり、今回の支援策は「地方の低所得世帯」を直接ターゲットにする設計となる。
背景にあるのは、タイの電力料金委員会(ERC)が決めた5〜8月の基準料金「3.88バーツ/単位」だ。プーミー・タイ党が掲げた「電気代3.88バーツ」公約を受けて据え置きで確定したが、エークナット氏はさらに踏み込んで「使用量が少ない層は3バーツ以下」にすることを目指し、階段式の料金構造を組み直す。
財源はまだ詳細に公表されていないが、国営電力会社(EGAT・MEA・PEA)の電力購入契約見直し、再生可能エネルギー枠との組み合わせ、そして石油基金とは別枠の電力補填基金による肩代わりが有力視されている。補助総額は月額単位で数十億バーツ規模になるとの業界試算がある。
バンコクや近郊の一般家庭では、エアコンを複数台稼働させると月500〜700単位に達するケースが多く、今回の「200単位以下で3バーツ」の直接の恩恵は限定的だ。恩恵を受けやすいのは地方の戸建て・長屋、高齢者世帯、農村の家庭で、物価高と猛暑に挟まれたこれらの層にとっては朗報となる。
タイ駐在の日本人家庭にとっても、関係者として目を配る価値はある。コンドミニアムの共用部電気や、家政婦・運転手の家族が住む家屋の電気代が下がれば、間接的な生活費の圧縮につながる。使用量別の階段料金が明確になれば、「家全体で200単位以内に抑える」節電意識が家族ぐるみの目標として機能しやすくなる。
エネルギー省は閣議承認が得られ次第、官報告示で料金体系の詳細を公開し、5月分の請求書から新しい構造を反映させたい考え。短期的な支援と中長期の料金構造改革の両面をにらんだ制度設計として、タイの電力市場が久しぶりに大きな動きを見せる局面だ。