タイ中部ノンタブリー県バンクルアイ郡バンカヌン地区村3のドリアン農家が22日、これまで経験したことのない激しい落果と収量激減に苦しんでいる現状を公表した。「王様のフルーツ」と称される「トゥリアン・ノン(ノンタブリー産ドリアン)」の生産地がいま、猛暑と汽水侵入のダブルパンチで追い込まれている。
取材に応じたナルディー・チャルンチャイピヤクンさん(60歳)によると、今年の猛暑と干ばつは例年を大きく上回り、花が開いても受粉がうまく進まなかった。結実率が落ちた上に、運河の水に塩分が混じる「汽水化」が長引き、生育途中のドリアンが次々と樹上から落ちる事態が起きている。
具体的な数字は壊滅的だ。これまでは1本の木で年間400〜500個のドリアンが収穫できていたが、今年はわずか80〜90個まで激減した。投下した手間と肥料・水代をまったく回収できない赤字状態が続いており、「もう園を売ってしまおうか」と話す農家も出てきているという。
汽水の侵入は、例年なら1月から2月の短期間に限られていたが、今年は4月に入ってもバンコク周辺の運河で塩分が検出され続けている。海水の遡上は気候変動と上流のダム放流量の変動によって左右され、ノンタブリーのような河口から近い農業地帯ほど影響が大きい。
対策として農家は、運河の水を引く代わりに水道水を買って樹木に与えている。しかし水道水は量を確保しにくく、塩分ストレスを完全に避けるほど大量に使えば、水道代が新たなコストとしてのしかかる。樹木の生理的ストレスが積もれば、翌年以降の収穫にも響く。
同じ園ではマンゴスチンにも影響が出ている。マンゴスチンは水分の多い土壌を好むが、汽水化で土中塩分が増えると根が弱り、実が小さくなるか傷んで出荷できなくなる。ノンタブリー産のマンゴスチンも同様に収量減と品質低下に直面している。
産業側は「収量が減れば価格が上がる」と単純には言えない状況だ。タイ経済全体の消費マインドが冷え込んでいるため、仮に店頭のドリアン価格が上がっても、高級品としての需要が細り売れ残るリスクが高まる。農家は値上げできず、採算ラインを割った状態で出荷を続けざるを得ない。
タイ在住の日本人にとって、ドリアンは「シーズン限定の贅沢」として毎年手を伸ばす果物である。ノンタブリー産は特に独特の濃厚な風味で知られ、バンコクの市場でも高値で流通してきた。気候変動と水資源の管理が産地の未来を左右する局面に入ったいま、来年以降の販売価格と品質は大きく揺れ動く可能性がある。