パタヤのウォーキングストリート裏で4月19日未明、酔った現職警察官に射殺された大麻店オーナー、パッタラポン・ジラチョクチャイクルさん(通称キング、41歳)の水かけ葬儀(ロッド・ナムソプ)が22日にパタヤ市内で営まれた。故人の67歳の母アット・ポンパイさんは、到着したパタヤ市警察署長の姿を目にした途端に泣き崩れ、その場で意識を失った。
アットさんはしぼり出すような声で「もう何も残っていない。落ち着けと言うけれど、あと何年経てばまた息子に会えるの」と涙を流し、親族や式場の職員が急いで駆け寄って介抱した。亡くなったキングさんは一人息子で、母にとってただひとりの頼みの綱だった。
葬儀に出向いたパタヤ市警察署長アネック・サラートンユ警察大佐は、失神から戻って起き上がった母親の正面に跪き、自らの頭を深く下げて謝罪した。アネック署長は「部下の行為について、指揮系統を代表して、個人としても心から詫びたい」と声を震わせ、両手を合わせる「ワイ」の姿勢のまま沈黙の時間を共有した。
同席したアルス・サバノン副署長(警察中佐)ら署内の幹部も、親族席の前で順に頭を下げ、家族に弔慰を伝えた。普段は無愛想な制服姿が多い警察署幹部が、遺族に跪く光景は、タイのメディアでも稀な場面として映像と写真が拡散している。
葬儀の日程は4月21日から25日までが通夜、26日が火葬と発表されている。寺院では連日、親族・近隣住民・ウォーキングストリート周辺で働く同業者や従業員が列を作って参列し、キングさんの冥福を祈っている。
加害者の警察中佐ジラサック・シリカタナム(54歳、通称「メジャー・ジョー」)は捜査課の上級投資官で、殺人と銃刀法違反で起訴されすでに勾留されている。前回の公判ではすべての罪状を否認し、さらに上司を侮辱したとして新たな罪状が追加されたが、裁判の進行は今後数カ月単位で続く見通しだ。
パタヤでは、ナイトエンターテインメント業界と現職警察の関わりが折々にスキャンダルとして表面化してきたが、「制服を着た側が銃を抜く」という今回の構図は、外国人旅行者・駐在員にも「タイの警察権力はどこまで信じてよいのか」という根源的な問いを投げかけた。警察署長自らが膝をつく姿は、失われた信頼を少しでも取り戻そうとする象徴的な動きでもある。