タイの有名な伝統菓子カフェが、公務員を名乗る客から「実際の価格より高い金額の請求書を発行してほしい」と要求され、拒否したところ、報復として1星レビューを書き込まれる騒動が起きた。4月21日にSNSで拡散し、34万フォロワーを抱える人気ページBaan Dok Pudが経緯を動画で公開した。
公務員客が発注した菓子の実価格は4,000バーツだった。ところが請求書は6,500バーツで発行してほしい、と要求された。差額は2,500バーツで、公務員が経費精算で中抜きする意図が透けて見える金額である。店側は「正確な金額でしか請求書を出せない」と即座に拒否した。
ここで諦めずに、同じ公務員客は改めて同じ店に発注してきた。配送の段階で再び「水増し請求書」を依頼したが、店側は同じ答えを繰り返した。請求書は実際の支払額通りに発行し、納品も滞りなく済ませた。ここまでは通常の商取引として成立していた。
しかし公務員客の反撃は、レビュー欄で起きた。Googleのレビューに1星を投稿し、「サービスに満足できなかった」とだけ書き込んだのである。菓子そのものに問題があったわけではなく、水増し請求書を発行しなかったことが「サービス不満」の内容と受け取られた格好だ。
Baan Dok Pudは事の次第を動画で公開し、「偽請求書を作ってくれなかったから1星か」とコメントを添えた。瞬く間に数万シェアを集め、タイの公務員の経費精算のあり方に対する怒りの声がSNS上で噴出している。店名そのものは非公表だが、該当の公務機関と客を特定しようとする動きがすでに広がっている。
タイの公的機関では、予算枠内での支出を実価格より高く計上し、差額を分配する「上乗せ領収書」の慣行が長年問題視されてきた。贈賄・キックバックと表裏一体の構造で、請け負う業者の側も「商機のため呑む」判断をしがちである。今回のように店側が正面から拒否し、さらにSNSで告発するケースは珍しく、そこに世論が強く反応した形である。
在タイ日本人にとっても、ビジネス相手との取引で類似の要請を受ける場面は皆無ではない。正直な業者を守るためにも、「水増し領収書」は受けない・発行しないという姿勢を明確に持つことが、長期的にはブランド価値を守る。今回の騒動は、その基本原則を改めて確認させる事例となっている。