タイの外務省は4月19日、サイアム・セメント・グループ(SCG)の輸送船2隻のうち1隻がホルムズ海峡を通過したと発表した。シーハサック・プワンゲートケーウ副首相兼外相がオマーンを公式訪問して調整を要請していた結果で、米イラン緊張で立ち往生していた船がようやく動き出した形である。
シーハサック外相は4月15日から17日までオマーンを公式訪問した。タイとオマーンの二国間関係を強化する目的の旅程に加え、ホルムズ海峡で立ち往生していたタイ船舶の通航について、オマーンを通じてイラン側への協力要請を重ねた経緯がある。
SCGの経営陣から外務省への連絡によると、タイが調整を依頼していた2隻のうち1隻が海峡を抜け、既に公海側に移っている。もう1隻はまだ立ち往生を続けており、タイ政府はこちらの通航についても引き続きイラン側との調整を進める方針である。
ホルムズ海峡は世界の海上原油輸送の約2割が通過する要衝で、4月の米イラン緊張で民間船舶の通航にも制約がかかっていた。タイ企業の船舶が通過できなかった期間は、SCGのセメント・建材原料の供給に直接影響する水準に達していた。
タイ政府がオマーンを仲介役に選んだのは、オマーンが湾岸諸国の中で対イラン関係を長年重視してきた実務的な理由がある。アラブ首長国連邦やサウジアラビアよりも、オマーン経由の方がイラン外交ルートに働きかけやすい。
SCGはタイ最大のセメント企業であり、船の立ち往生が長引けば国内の建材価格と建設コストに波及する懸念があった。1隻の通過実現は市場の安心材料だが、もう1隻の帰還までは完全な解決とはならない。
外務省は「もう1隻についても継続的な調整を進める」と表明した。タイ国民にとっては、中東情勢が直接家計にも影響する現実を示す事例として記憶に残る。