エークニティ副首相兼財務大臣は4月9日夜、国会での答弁で中東戦争に端を発するエネルギー危機への対応方針を示した。世界規模の危機であり終結の見通しが立たない以上、インフレと景気後退の同時進行に備える必要があると強調した。
政府がまず着手したのは石油基金を活用した燃料価格の抑制である。物品税の引き下げについては「税収が医療費に充てられており、減税すれば医療制度に影響が及ぶ」として慎重な姿勢を示した。この判断は同日報じられた物品税は引き下げず、閣議で運輸・漁業向け救済策を協議へとも整合する。
4月11日の閣議では運輸業者、低所得層、漁業者、農業者など影響の大きいグループへの支援策を個別に検討する。限られた財源のなかで「全員を一律に助けることはできない」と率直に認め、対象を絞った支援に集中する方針を打ち出した。石油基金の赤字が590億バーツに拡大している現状では、財政余力の見極めが急務となっている。
とりわけ警戒するのは1997年のアジア通貨危機の再来である。特定セクターに財源を集中投下し、戦争が長期化した場合に「危機の上に危機が重なる」事態を避けなければならないと訴えた。タイ中銀総裁もGDP見通しを1.3〜1.7%に下方修正しており、政府と中央銀行が同時に守りの態勢を敷いている格好である。
一方で副首相は中長期の成長戦略にも言及し、タイを食品生産のハブに育てることとエネルギーインフラへの投資を二本柱に据えると表明した。資源輸入国であるタイが危機を乗り越えるには、食料の輸出競争力強化とエネルギー供給の多角化が不可欠との認識を示した形である。