ヤラー県ヤハー郡の幹線道路沿いにある「カヤー・ロティバカ」(焼きロティ店)が、5年間で地域の人気店に成長した。油を使わず、ヤシの葉鞘を燃料にした伝統的な釜で焼き上げる「バカ・スタイル」が特徴で、独特の香ばしさが口コミで広まった。南部マレー系ムスリムの食文化を現代的に復興させた事例として注目される。
「ロティバカ(โรตีบาก)」または「ロティ・パオ(ロティ焼き)」は、タイ南部の伝統的な食べ物だ。小麦粉・バター・卵・ミルク・イーストを混ぜて作った生地をバナナの葉の上に乗せ、ヤシの葉鞘を燃料にした窯の中で約5分焼き上げる。上下から均一に熱が当たる仕組みで、甘さ・塩み・バターのコクが三位一体となった独自の味わいになる。
ヤラー県はタイ深南部のムスリム居住地域で、マレー語を第一言語とするマレー系住民が多い。ロティバカはこの地域の家庭料理・屋台の定番で、かつては地元の人しか知らない郷土食だった。しかし2020年代に入り「地方グルメ発掘」のトレンドが拡大し、SNSやYouTubeで紹介されて一気に注目を集めるようになった。
店主のパリラー・タルック(通称・カヤー)氏は5年前に先祖伝来の製法を使ってこの店を開いた。「祖母から受け継いだ製法をそのまま続けることで、本物の味を守りたい」と語る。タイ食文化評論家は「深南部の伝統食が全国的に認知されることで、地域文化の誇りにもなっている」と評価する。
タイでは77県を「食の宝庫」として発掘するプロジェクトが各メディアで展開されており、深南部の食文化は「辛くてフルーティーなマレー料理」として特に個性が際立つ。タイ観光スポーツ省も南部食文化ツーリズムを推進しており、ロティバカのような伝統食は地域振興の切り口として機能している。