バンコクの旧市街エリア、ヤワラートと並行して走るソンワート通り。観光ガイドには載らないこの古い道の端に、知る人ぞ知る一杯がある。「ルークチンムーニンジャ(忍者豚団子麺)」。看板は小さく、席も少ない。だが創業から30〜40年経った今も、常連が途切れることはない。
店の場所と歴史
Khaosodが取材したこの麺屋は、ソンワート通りの歩道脇に構えている。バンコクのかつての商業の中心地だったエリアで、今も古い倉庫や問屋が残る。ヤワラートが観光地化した一方で、ソンワート通りは昔ながらの商業地区としての雰囲気を残している。
店名の「ニンジャ(忍者)」の由来については店主も詳しく語らないが、「素早く、正確に、静かに一杯を仕上げる」という職人的なスタイルに由来するとも言われる。
現在店に立つのは70歳前後の「アジェック(おじさん)」と呼ばれる初代店主。父の代から受け継いだ豚団子の製法と、自家製スープのレシピを守り続けている。
一品勝負の豚団子麺
「ルークチン(ลูกชิ้น)」はタイの食文化に欠かせない肉団子だ。豚・牛・魚などバリエーションがあるが、この店は豚一本。仕込みから手仕事で、市販品は使わない。
一口食べると表面のもちもちした食感の後に肉のうまみが広がる。スープは豚骨と薬草で長時間煮込んだクリアなブロスで、過度な調味料を使わないシンプルな旨さだ。麺はセンレック(細米麺)かバミー(小麦麺)から選べる。一杯の値段は50〜60バーツ程度。
タイの屋台麺文化
タイの屋台麺はバンコクの食文化の根幹だ。2016年にミシュランが「ミシュランガイドバンコク」でホーレイラオイ(鴨麺)などの屋台を星付きで掲載して以降、タイの屋台文化への世界的な関心が高まった。
しかしミシュランに載った店が観光客で混雑し、「本来の姿」を失ってしまったという見方も根強い。ソンワート通りのこの店のように「メディアには出ず、常連だけが知っている」という存在こそが、屋台文化の本質だという声もある。
旅行者へのアクセス
ソンワート通りはMRT孔子廟駅(Wat Mangkon)から徒歩圏内だ。ヤワラートを訪れた後にぶらりと歩いて寄れる距離にある。