5月21日朝、タイ南部トラン県シーカオ郡マイファート町のラチャモンコール工科大学トラン校の構内に、地元住民数百人がバイクや車で次々と入っていった。お目当ては、雨季最初の雨で一気に顔を出したเห็ดเสม็ด(セメック・キノコ、南部の方言ではเห็ดเหม็ด)。年に一度しか姿を見せない、白サメック林の恵みだ。
同大学の敷地内には、白サメック(ต้นเสม็ดขาว)の林が1,300ライ以上広がっている。乾季の終わり、初めての雨が地面を濡らした直後の数日間だけ、この木の根元で菌糸が一気に動き出し、肉厚の傘がにょきにょきと地表に並ぶ。今年もちょうどそのタイミングが来たわけだ。
採取に訪れていたのはトラン県内だけではない。隣接するパッタルン、サトゥーン、ナコーンシータマラートからも住民が車を走らせてきていた。林の中で目立っていたのは白に紫がかった大ぶりのキノコと、藁茸(เห็ดฟาง)に似た真っ白なタイプの2種類。どちらも丸々と太っており、見るからに食べごたえがありそうだ。
買い取り価格は1kgあたり150〜200バーツ。日本円にすると700〜900円弱。年に一度きりの自然の現金収入として、家族総出で林に入る人もいるという。
面白いのは、このイベントが大学のキャンパスで毎年成立しているところだ。学術機関の敷地と、地元住民の伝統的な採取活動が、誰の音頭でもなく毎年5月の最初の雨で同期する。タイで暮らしていると、こういう「天気が予定表」の風景にときどき遭遇する。1年に1度、空模様で開幕が決まるキノコ祭り。雨季の到来を肌で実感する、南部らしい朝の光景だった。