中国・上汽通用五菱(ウーリン)がタイ市場向けに商用電気バン「WULING Porta EV」を投入した。積載量1.2トン、航続距離400kmを実現し、燃料高騰に苦しむタイの物流業界に新たな選択肢を提示している。最大の訴求ポイントは1キロメートルあたり56サタン(約0.56バーツ)という低い輸送コストだ。
スペックと価格
WULING Porta EVの主要スペックは最大積載量1.2トン、一充電あたりの航続距離400kmだ。都市部のラストワンマイル配送から中距離の拠点間輸送まで幅広い用途を想定している。400kmの航続距離は日帰り配送であれば十分な数値で、バンコク近郊の物流拠点を起点とした運用に適している。
タイ政府はEV普及を成長戦略の柱に据えており、乗用車だけでなく商用車の電動化にも取得税の免除や輸入税減免などの税制優遇を設けている。この優遇措置が商用EVの実勢価格を押し下げる効果を持つ。
燃料高騰との対比
2026年3月から続くタイの燃料危機でディーゼル価格が47バーツ台に高騰し、物流業者の経営を直撃している。トラック1台で1日200リットルを消費する業者は、危機前と比べて1日5,000〜7,000バーツ(月15〜20万バーツ)のコスト増に見舞われた。
56サタン/kmのPorta EVと比べると、ディーゼル車は現在の燃料価格で1km走行あたり3〜5バーツのコストがかかる計算だ。大幅なコスト削減が可能で、投資回収の試算も変わってくる。
ウーリンのタイ展開
ウーリン(五菱)は小型EVの「Air ev」でタイ市場に参入し、エントリープライスのEVとして一定のシェアを獲得した。今回の商用モデル投入で乗用車から商用車へと製品ラインナップを拡大した形だ。
タイは中国系EVブランドの東南アジア攻略の主戦場になっている。BYD、NETA、MG(上汽)、GreatWall(ORA)に加え、ウーリンも商用分野での足場固めを狙う。日系自動車メーカーが強いピックアップトラック市場への侵食を中国EVがどこまで進められるかが、今後の焦点となる。
タイの商用EV普及の課題
商用EVの普及には充電インフラの整備が不可欠だ。物流拠点での大容量充電設備の設置、長距離路線での充電スポット拡充が課題となる。また、整備・修理の体制も乗用車EVと比べてまだ整っていない。
ウーリンはAftersalesサービス網の拡充を急いでいるが、全国の物流事業者に安心して使ってもらえる水準になるには時間がかかる。燃料危機が長期化するほど、コスト削減を求める業者がEVに向かう動きは加速するとみられる。