ディーゼルが50バーツを突破した影響が、タイの庶民の台所を支える「移動販売車」にも直撃している。20年のベテラン販売員が「こんな状況は初めて」と悲鳴を上げた。
5日午前5時、ディーゼル価格がさらに2.80バーツ引き上げられ、小売価格はリッター50.54バーツに達した。移動販売車はディーゼルエンジンのトラックで住宅街を巡回し、生鮮食品や総菜を販売するタイの庶民向け移動マーケットである。日本の移動スーパーに近いが、タイではより身近な存在で、特に地方部の住民にとっては欠かせない買い物手段だ。
販売歴20年のナムオーイさん(47歳)は、これほどの打撃は経験したことがないと語る。以前は1日の燃料代が約500バーツだったが、現在は800〜1,000バーツに跳ね上がった。走行距離は同じなのに、コストだけが倍近くになった計算である。
対策として、仕入れる商品の量を減らすしかないという。袋詰めの総菜は価格を据え置いているが、中身の量が目に見えて減っている。コンケンの麺屋が麺をやめてカオマンガイだけにしたのと同じ構図で、「値上げはできないから、量で調整する」のが零細事業者の現実である。
ナムオーイさんは政府に対し「本気で対策を」と訴える。物価高でも値上げしない70歳の食堂のように意地で踏ん張る店主もいるが、燃料を使わなければ商売が成り立たない移動販売車にとって、逃げ場はない。