いすゞのタイ法人トライペッチ・いすゞの佐藤裕康社長は2026年3月下旬、中東情勢と経済の先行き不透明さから、消費者が自動車の購入を先送りする可能性があるとの見方を示した。2026年の販売目標として掲げた77,500台の達成に暗雲が立ちこめている。
販売目標と市場予測
いすゞは2026年のタイ自動車市場全体を64万台と予測し、そのうちピックアップトラックを全ブランド合計で15万1,000台と見込んでいた。いすゞ自身の目標は総販売台数77,500台(うちピックアップ54,000台)だ。
しかし佐藤社長は「中東情勢の長期化で見通しを立てるのが難しく、実情に応じて再度調整が必要になるかもしれない」と述べた。燃料危機による消費マインドの悪化が、車の大型購入判断を後退させている実態を認めた発言だ。
燃料危機の影響
タイの燃料危機は2026年3月から本格化し、ディーゼル価格が47バーツ台まで急騰した。ピックアップトラックはディーゼル仕様が主流で、燃料費の上昇は維持コストの増大に直結する。農村部では「燃料が高いのに新車を買っている場合ではない」という心理が広がり、購入の先送りが現実のものになりつつある。
地方の農業従事者や中小事業者はピックアップトラックの主な購買層で、燃料高騰はこの層に直接打撃を与えている。金融機関の審査が厳しくなっているという要因も重なる。
いすゞの立ち位置
タイにおけるいすゞは長年ピックアップトラック市場でトップクラスのシェアを誇ってきた。D-MAXシリーズはトヨタ・ハイラックスや三菱トライトンと並ぶベストセラーで、農業・建設・運輸分野で幅広く使われている。
佐藤社長は「燃費性能に優れた車両をラインナップの強みとして、エネルギー情勢が不透明な中でいすゞが最も適した選択肢になる」と強調した。燃費の良さを逆手にとった販売戦略で、危機下でも競争力を維持しようという姿勢だ。
政府への3つの要望
佐藤社長は政府に3点を求めた。金融機関の融資審査の緩和(ピックアップ市場の活性化のため)、トランプ関税の影響への対応(輸出・農業分野への補填)、経済刺激策の優先実施だ。
タイは年間約80〜100万台の自動車生産拠点であり、「アジアのデトロイト」とも呼ばれる。日系自動車メーカーが圧倒的なシェアを持つ市場で、販売不振が長引けばサプライヤーを含む雇用全体に波及する。政府の景気対策がどれだけ迅速に機能するかが、2026年後半の自動車市場の行方を左右する。