スコータイ県でディーゼル燃料の供給不足が深刻化し、住民が給油のために5時間以上待つ事態が続いている。農業用燃料を確保するために半日を費やすことが日常化しつつある中、住民は「仕方ない(จำยอม)」と諦め顔だ。
スコータイ県は農業が主要産業の地方県で、耕運機・トラクター・水ポンプなどの農業機械が不可欠だ。これらの多くはディーゼルで動くため、ディーゼル不足は農作業そのものを止めるリスクがある。田植えや収穫の時期に燃料が手に入らなければ、農家の収入に直接的な打撃となる。
給油できる量にも制限があった。1台当たり300バーツ(約1,350円)分のみという制限が設けられていたとされており、5時間並んでも少量しか入れられないという現実が農家を悩ませた。「もうどこに行っても行列だ。車も農機も動かせない」という声が現地から届いた。
タイの石油基金はこの時期、ディーゼル補助金を20バーツ以上に引き上げて価格を抑制しようとしていたが、物理的な供給不足は補助金では解決できない問題だ。石油会社が在庫を確保できなかった背景には、中東からのタンカー輸送の遅延と国内流通網の混乱があったとされる。政府は「状況は改善している」と発表していたが、スコータイのような地方では都市部より数日遅れて改善が届くという現実があった。
世界遺産の古都として知られるスコータイは観光地としての顔を持つが、その背後には農業を主な生業とする地域住民の生活がある。エネルギー危機が農村部の暮らしに与える影響は、観光客の目には見えないところで深刻な形で進んでいた。燃料危機を機に、農業地帯への安定供給体制の整備が改めて課題として浮き彫りになった。
